研究課題
昨年度はヒトiPS細胞から小腸上皮細胞への分化誘導法の最適化を行い、これまでよりも分化を促進する分化誘導法を見出した。そこで本年度は、この分化誘導法により作製したヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞の特徴に関してより詳細な解析を行った。分化させたヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞は、さまざまな小腸細胞マーカー(Villin、sucrase-isomaltaseなど)や薬物トランスポーター(PEPT1、P-gpなど)、薬物代謝酵素(CYP3A4、CES2A1など)を発現していた。また、これらの発現レベルはヒト小腸と同等もしくはそれ以上の高い値を示した。薬物代謝酵素活性に関しては、これまでの分化誘導法により作製した細胞を大きく上回るほどのCYP3A4活性を有しており、小腸において重要な排出トランスポーターであるP-gpやBCRPの活性もみとめられた。さらに、このヒトiPS細胞小腸上皮細胞を用いることで、ヒト小腸における吸収率の予測が可能であることが示唆された。したがって、今後は小腸の薬物動態予測モデルとしての利用の可能性について、より詳細に検討を進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
昨年度見出した分化誘導条件により作製したヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞の特徴に関して検討を行うことができた。今後薬物動態予測モデルとして利用するにあたって基盤となる知見が得られたことから、おおむね順調に進展しているものと考えられる。
当初の計画どおり、薬物の消化管吸収率や小腸における薬物相互作用の予測がどの程度可能か検討を進める。
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Drug Metabolism and Disposition
巻: 46 ページ: 1411~1419
doi: 10.1124/dmd.118.082123
YAKUGAKU ZASSHI
巻: 138 ページ: 1241~1247
doi: 10.1248/yakushi.18-00120