研究課題/領域番号 |
17K08423
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
伊藤 智夫 北里大学, 薬学部, 教授 (30223168)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 薬物動態 / バイオアベイラビリティ / 相互作用 / 定量的予測 |
研究実績の概要 |
CYP1A2の基質であるテオフィリンおよびチザニジンについて、またCYP2D6の基質であるプロプラノロールについて検討を行った。まず、Caco-2細胞を用いた各薬物の輸送実験における透過係数(Papp)の値から判断すると、小腸上皮細胞の透過が速いため、消化管からの吸収率(Fa)は100%であると推定された。また、ヒト小腸ミクロソーム中の各CYP分子種の存在量は、CYP3Aが82%、CYP2C9が14%であり、その他のCYP分子種の量は極めて少ないことから、CYP1A2またはCYP2D6の基質を経口投与後の小腸アベイラビリティ(Fg)は100%であると推定された。従って、これらの薬物を経口投与後のバイオアベイラビリティ(F)は、肝アベイラビリティ(Fh)に依存することが明らかとなった。 ヒト肝ミクロソームを用いた代謝実験から、テオフィリン、チザニジンおよびプロプラノロールの主代謝経路の代謝クリアランスは、それぞれ4.38×10-6、1.42×10-2、5×10-2 mL/min/mg proteinと推定された。我々はこれまでにCYP3A4の基質を用いた検討より、ヒト肝ミクロソームを用いた代謝実験から成人(70 kg体重)の肝クリアランスを推定するためのスケーリングファクターを報告してきた。テオフィリン、チザニジンおよびプロプラノロールについて、我々が報告してきたケーリングファクター、肝血流量、そして各薬物の血漿中非結合形分率(それぞれ0.44、0.7、0.13)の値から肝アベイラビリティ(Fh)を算出したところ、それぞれ1.0、0.1、0.35となった。ヒトにおけるテオフィリン、チザニジンおよびプロプラノロールのバイオアベイラビリティは0.96、0.21、0.26であることから、各薬物のバイオアベイラビリティをある程度予測可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多数の薬物を対象としているため、定量法の確立に手間取っている。今後は、対象薬物を絞り込むことや実験内容の再検討も考慮する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、CYP2C9の基質であるワルファリン、CYP2C19の基質であるオメプラゾールおよびジアゼパムについて、ヒト肝ミクロソームを用いた代謝実験を行い、経口投与後のバイオアベイラビリティをin vitro実験から予測する。ヒト小腸ミクロソーム中の各CYP分子種の存在量は、CYP3Aが82%、CYP2C9が14%であり、それ以外のCYP分子種の量は極めて少ないことから、小腸アベイラビリティについてはCYP2C9の基質についてのみ予測を試みる。Caco-2細胞の透過係数については、我々の結果と文献値が近い値を示しているため、文献値を使うことも考慮する。一方、CYP1A2の基質であるチザニジンとCYP1A2阻害薬であるフルボキサミンおよびシプロフロキサシンとの相互作用の予測については、基質と阻害薬のCaco-2細胞内動態から吸収速度を予測し、ミクロソームを用いた代謝阻害実験から肝臓における代謝阻害を予測する必要があるため、予測に必要となる詳細なパラメータ値を求める。
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