研究課題/領域番号 |
17K08423
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
伊藤 智夫 北里大学, 薬学部, 教授 (30223168)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 薬物動態 / バイオアベイラビリティ / 相互作用 / 定量的予測 |
研究実績の概要 |
CYP1A2の基質であるチザニジンについて、ヒト肝ミクロソームを用いた代謝実験からKm値は46 micro-mole/L、Vmaxは0.43 nmol/ min/ mg proteinと算出された。一方、ヒト小腸ミクロソームを用いた代謝実験では、チザニジンの代謝は認められなかった。 阻害薬の阻害様式を明らかにし、阻害定数を算出するため、Luciferin-1A2を基質とし、チザニジンおよびフルボキサミンを阻害薬として、発光アッセイ法(Promega Corporation)を用いた検討を行った。Dixon plot解析の結果、チザニジンおよびフルボキサミンともにCYP1A2を競合的に阻害することが示され、阻害定数はそれぞれ50, 0.0038 micro-mole/Lであった。チザニジンの阻害定数(50 micro-mole/L)は、そのKm値(46 micro-mole/L)とほぼ同じ値となった。また、阻害定数の値から、フルボキサミンは非常に強力なCYP1A2の競合的阻害薬であることが示された。 我々が構築してきたITAM-PK(Intestinal transit, absorption and metabolism based pharmacokinetic)モデルを用いて、チザニジンのAUCを予測したところ、チザニジン単独投与時のAUCが6.6(ng・h/ mL)であるのに対して、フルボキサミン併用時のAUCは216(ng・h/ mL)と算出され、フルボキサミン併用によりチザニジンのAUCが33倍となることが示された。ヒト投与試験では、フルボキサミン併用時にチザニジンのAUCが67倍となることが報告されている。今回の検討では、チザニジンAUCの上昇率が報告値の半分程度であったが、少なくとも併用禁忌となるような大幅なAUCの上昇を予測可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多数の薬物を対象としているため、定量法の確立に手間取っている。また、非常に代謝の遅い薬物の代謝速度を、基質減少法で正確に求めることの困難にも直面している。今後は、対象薬物を絞り込むこと、実験内容の再検討、各種パラメータの文献値の活用も検討する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、CYP2C9の基質であるワルファリン、CYP2C19の基質であるオメプラゾールやジアゼパムについて、ヒト肝ミクロソームを用いた代謝実験を行い、経口投与後のバイオアベイラビリティをin vitro実験から予測する。ただし、非常に代謝が遅い薬物については、基質減少法によって代謝パラメータを正確に見積もることが困難であること、また代謝パラメータ値の見積もりが少々異なっても全体の予測には影響がないため、文献値を使うことも考える。Caco-2細胞の透過係数については、我々の結果と文献値が近い値を示しているため、文献値を使うことを試みる。一方、CYP1A2の基質であるチザニジンとCYP1A2阻害薬であるシプロフロキサシンとの相互作用についても、今回報告したフルボキサミンと同様の手法で、相互作用の定量的な予測を試みる。
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