研究実績の概要 |
我々が構築してきたITAM-PK(Intestinal transit, absorption and metabolism based pharmacokinetic)モデルを用いて、CYP3A4およびCYP1A2の基質となる薬物について、in vitro実験データから経口投与後のバイオアベイラビリティを定量的に予測可能であることが示された。そこで本研究では、グルクロン酸抱合代謝が主たる代謝経路である薬物について、in vitro実験データから経口バイオアベイラビリティを定量的に予測することを試みた。まず、SGLT2阻害薬であるカナグリフロジンを候補薬物とした。カナグリフロジンは主にUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)分子種のうちUGT1A9, 2B4で代謝され、経口投与後のバイオアベイラビリティは0.65と報告されている。カナグリフロジンは市販されているため、購入手続きと各種実験の準備を進めた。しかしながら、最終的に特許等の理由でカナグリフロジンの試薬を輸入できないとの通知を受けた。そこで、次の候補薬物としてアセトアミノフェンを選択した。アセトアミノフェンの主代謝経路もグルクロン酸抱合であり、経口投与後のバイオアベイラビリティは0.88と報告されている。アセトアミノフェンとその主代謝物(グルクロン酸抱合体)を購入し、HPLCによる定量法の確立に努めた。その結果、逆相カラム:Mightysil RP-18 GP(関東化学)、移動相:0.05 % トリフルオロ酢酸・メタノール・アセトニトリル混液 (98:1:1) ~0.05 % トリフルオロ酢酸・メタノール・アセトニトリル混液 (30:35:35)のグラジエント、流速0.7 mL/min、測定波長:UV 243 nmで、アセトアミノフェンとグルクロン酸抱合体が同時定量可能であることが示された。現在、確立された定量法を用いて、ヒト肝ミクロソームを用いたアセトアミノフェンの代謝実験等を行っており、得られたデータをもとにITAM-PKモデルを用いて経口バイオアベイラビリティの予測を試みる予定である。
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