研究課題/領域番号 |
17K08425
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
山崎 浩史 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (30191274)
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研究分担者 |
村山 典惠 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (90219949)
清水 万紀子 昭和薬科大学, 薬学部, 准教授 (90307075)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | サリドマイド / 胎盤 / 肝 / 酵素誘導 / 代謝的活性化 |
研究実績の概要 |
ヒト胎盤標本およびヒト胎盤由来BeWo細胞をin vitro酵素源として、サリドマイド関連化合物群の代謝的活性化と酵素誘導を評価した。ヒト胎盤標本および胎盤BeWo細胞は、低いながらも検出可能なP450 3A4/5 mRNA発現および薬物酸化活性を示した。すなわち複数の個体別に得られたヒト胎盤ミクロソーム画分は、検出可能なミダゾラム1'- および4-ヒドロキシル化およびサリドマイド5-ヒドロキシル化活性を示した。推奨培地で培養したヒト胎盤BeWo細胞も、検出可能なミダゾラムの1'-および4-水酸化およびサリドマイド5-水酸化活性を示した。推奨培地に使用される内因性ホルモンによるマスキング効果を減少させるために、5%チャコール処理ウシ胎児血清を含有する改変培地と共に培養した胎盤BeWo細胞において、P450 3A4/5 mRNAの誘導および酸化活性が認められた。サリドマイドは、P450 3A4/3A5、2B6、およびプレグナンX受容体(PXR)mRNAレベルを2-3倍有意に誘導したが、リファンピシンは改変培地条件下でP450 3A5およびPXR mRNAのみを増強した。これらの修飾条件下では、サリドマイドはミダゾラムの1'-ヒドロキシル化およびサリドマイドの5-ヒドロキシル化活性を3倍有意に誘導したが、ブプロピオンヒドロキシル化活性は誘導しなかった。まとめると、in vitroで認められたヒト胎盤におけるP450 3A酵素の自己誘導を伴うサリドマイドの5-ヒドロキシサリドマイドへの活性化は、肝および胎盤が複雑に連携するin vivo状態でも起こりうることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト胎盤細胞を活用した医薬品の代謝的旗活性化反応を、細胞培養条件を工夫することで自己酵素誘導作用とともに明示し、論文化できたことから、一定の成果を得たものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に向けて、ここまでに得られた成果を統合し、フタル酸骨格を有する医薬品や一般化学物質のヒト型代謝反応とその触媒酵素の自己誘導に着目した研究をまとめていく。ヒト人工多能性幹(iPS)細胞から分化した肝細胞様細胞は、薬理学的研究における応用にとって非常に興味深い。薬物代謝試験では、ヒトiPS細胞由来の市販の肝細胞をプレートに播種してから1週間後に使用することが一般的に推奨されている。しかし、筆者らは3ー4週間培養した後、iPS由来肝細胞のP450 2C9および2C19に依存するジクロフェナク4'-水酸化およびオメプラゾール5-水酸化活性は有意に高いことを見出している。in vitro系の知見をin vivo予測につなぐための研究を、本課題の解決を通して、さらに推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
極めて少額の端数が生じた。
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