研究課題
ヒト胎盤とヒト肝細胞を組合わせた系を活用し、活性化と解毒のバランスの上でサリドマイドの基本骨格であるフタル酸エステル類の反応性代謝物を補足し、ヒト特有な毒性発現バイオマーカーを in vitro および in vivo にて詳細に解析した。In vitro で認められたヒト胎盤における P450 3A 酵素の自己誘導を伴うサリドマイドの 5-ヒドロキシサリドマイドへの活性化は、肝および胎盤が複雑に連携する in vivo 状態でも起こりうることが推察された。これまでに得られた成果を展開し、フタル酸骨格を有する一般化学物質のヒト型代謝反応とその触媒酵素の自己誘導に着目した。フタル酸ジエステル類をヒト肝細胞移植マウスに経口単回投与すると、ヒト型の代謝物や胆汁/尿中排泄の動態が確認された。調査した化合物群の集積パラメータ値をもとに、動物またはヒト用生理学的薬物動態モデルを活用した仮想投与量を設定し、血中および肝臓中濃度推移を予測したところ、一定量を仮想単回経口投与後の動物血中濃度時間曲線下面積値は、選択した化合物のコンパートメントおよび生理学的薬物動態モデルでの前向き出力が一致した。一方、ヒト集団試料のバイオモニタリング報告値を定常状態の平均濃度と見なし、環境汚染物質フタル酸エステル類の生理学的薬物動態モデルを用い、一日あたりの摂取量を逆算する研究をまとめることができた。肝集積を含む経口投与後の体内動態を記述するモデルを活用し、活性化と解毒のバランスを考慮の上、物質量と生体中濃度を双方向に予測しうることを明かにした。これらのことから、一般化学物質の経口吸収後の臓器移行性が、肝毒性などの臓器毒性発現に一部関与していることが推定された。
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