研究課題/領域番号 |
17K08430
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
藤田 卓也 立命館大学, 薬学部, 教授 (00247785)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | Na+依存性クエン酸輸送担体 / TCA回路 / クエン酸 |
研究実績の概要 |
クエン酸は、脂肪酸やコレステロールの炭素源であり、代謝エネルギー産生における基質にもなることから、肝臓におけるTCA中間体の中でも中心的な役割を担っている。また、クエン酸は解糖系の抑制作用、糖新生の促進作用を有することも明らかとなっており、様々な代謝経路への関与が示唆されている。ヒト血漿中のクエン酸(~135 μmol/L)の約85%は肝臓において処理されることが報告されていることから、血漿中から肝細胞内へのクエン酸輸送に関わるNa+依存性クエン酸トランスポーター (NaCT/SLC13A3) の輸送活性調節機構の解明は重要である。本研究では、NaCTを介したクエン酸輸送に対する protein kinase C (PKC) による制御機構に関して NaCT を発現している HepG2 細胞を用いて検討した。HepG2は、定法に従い10%FBS含有DMEM で継代培養したものを実験に供した。HepG2 におけるNa+依存性クエン酸輸送活性は、PKC 活性化剤(PMA)存在・非存在下、[14C]クエン酸を用いて定法に従い検討した。Na+依存性[14C]クエン酸の輸送は、PMA濃度依存的、時間依存的に有意に低下した。速度論的な解析の結果、PMAによる輸送活性の低下はVmax値の低下に由来し、Km 値には変化が認められなかった。また、この輸送活性の低下は、PKC阻害剤処理により回復した。以上の結果により、HepG2に発現しているNaCTの輸送活性はPKCにより制御されていることが明らかとなった。NaCTは、ニューロンにおいてもTCA回路の維持に重要な役割を果たしていると考えられ、現在、同様の検討をマウス大脳皮質初代培養系を用いて進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Na+依存性クエン酸輸送系の輸送制御機構に関しては、順調に検討が進んでいる。また、新規エンケファリン輸送系のマウス大脳皮質初代培養神経細胞での同定に関しても検討を進めており、その輸送制御機構もあわせて検討を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
Fe3+ や Zn2+ は生理機能を正常に維持する上で必要不可欠な金属イオンである。Fe3+ は肝細胞においてグルコーストランスポーターやインスリン受容体の発現を調節することが報告されており、Zn2+ によりアストロサイトでのGABA トランスポーターが制御されていることも研究代表者は明らかにしている。そこで、今年度は NaCTを介したクエン酸輸送に対するFe3+ やZn2+ などの重金属イオンの活性調節機構に関して、 NaCT を発現している HepG2 細胞、マウス大脳皮質初代培養神経細胞を用いて検討する予定である。
|