研究課題/領域番号 |
17K08437
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 武人 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (00376469)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 血液透析 / 慢性腎臓病 / 蛋白質結合性尿毒素 |
研究実績の概要 |
蛋白質結合性尿毒素は、慢性腎臓病(CKD)患者や血液透析(HD)導入患者における心血管疾患(CVD)リスクを上昇させることが知られているが、その高いタンパク質結合性のため通常のHDでは除去が困難である。そのため、蛋白質結合性尿毒素を効率的に除去可能な血液浄化療法の開発は臨床的にも重要な課題である。本研究の目的は、HDによる物質除去速度が血液中と透析液中の非結合型濃度の差に依存することに着目し、透析液中に蛋白質結合性尿毒素を結合する結合剤を加えることで蛋白質結合性尿毒素を体内から効率的に除去することが可能となるか否かを検証することである。また、動物実験等を併せて実施することで、結合剤を添加したHDの末期CKD患者に対する治療法としての有用性を検証することも目指している。 平成29年度には主としてin vitroにおける検討を行い、主な蛋白質結合性尿毒素の、結合剤を添加したHDによる除去効率やその決定要因に関する定量的な解析を試みた。実臨床に用いるヒト用のダイアライザーとペリスタリックポンプを組み合わせた透析回路を組み立て検討を開始したが、活性炭が透析回路内あるいはダイアライザー内部で目詰まりを起こしやすく、透析液に添加する結合剤としては適していないと考えられた。そこで、現在は同じく実臨床における血液吸着に用いられる結合剤であるヘキサデシル基結合セルロースなどの使用も検討している。今後、条件が決定次第、結合剤を添加したHDによる蛋白質結合性尿毒素(インドキシル硫酸、パラクレシル硫酸など)の除去効率を検証していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究においては、初年度に吸着剤を含む透析液を用いた透析実験を行い、蛋白結合性尿毒素の除去効率を定量的に評価する計画であった。しかし、活性炭を添加した透析液を、透析回路やダイアライザー内にスムーズに潅流させるための条件設定が研究開始当初の予測よりも困難であった。そのため、透析液に添加する結合剤やダイアライザーの種類の変更も含めた追加検討が必要となり、結果として蛋白結合性尿毒素の除去効率に関する検討に遅れが生じている。 以上の理由から、本研究の進捗状況を「やや遅れている。」と判定した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降は、まず本研究の遂行上最も解決すべき点となっている透析条件設定を最優先として研究を進める予定である。吸着剤としては、当初計画していた活性炭に加えてシクロデキストリンなども検討対象に加える計画である。また、目詰まりのリスクを低減するため、よりポアサイズの大きいダイアライザーを用いることも検討している。 平成30年度は上述の検討を可及的速やかに完了させ、蛋白結合性尿毒素の除去効率を定量的評価を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初の計画では、平成29年度に透析液に結合剤を添加した場合における蛋白結合性尿毒素の除去効率について、複数の蛋白結合性尿毒素を対象に定量的に評価する予定であった。しかし、最初に用いた活性炭では透析回路やダイアライザーの目詰まりが起こりやすいことが考えられ、最適な透析条件決定に時間を要することとなった。その結果として次年度使用額が生じることとなった。 (使用計画) 平成30年度以降は、可及的速やかに透析条件の最適化を達成すべく引き続き検討を続ける。平成29年度末に臨床現場から廃棄予定の血液透析装置を譲り受けたこともあり、今後条件検討は効率化すると考えている。条件最適化後に、上述の次年度使用額分も活用して、蛋白結合性尿毒素の除去効率評価をはじめとする実験に移る予定である。
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備考 |
http://plaza.umin.ac.jp/~todaiyak/
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