研究課題
タンパク結合性尿毒素は、慢性腎臓病(CKD)患者や血液透析(HD)導入患者における心血管疾患(CVD)リスクを上昇させることが知られているが、その高いタンパク質結合性のため通常のHDでは除去が困難である。そのため、タンパク質結合性尿毒素を効率的に除去可能な血液浄化療法の開発は臨床的にも重要な課題である。本研究の目的は、HDによる物質除去速度が血液中と透析液中の非結合型濃度の差に依存することに着目し、透析液中にタンパク結合性尿毒素を結合する結合剤を加えることで、タンパク結合性尿毒素を体内から効率的に除去することが可能となるか否かを検証することである。また、基礎的検討においてタンパク結合性尿毒素の効率的除去が確認した後に、動物実験等を合わせて実施することで、結合剤を添加したHDの末期CKD患者に対する治療法としての有用性を検証することも目的としている。平成30年度には、昨年度に引き続きin vitro実験により主なタンパク質結合毒素の、結合剤を添加したHDによる除去効率やその決定要因に関する定量的な解析を試みた。平成29年度には、ダイアライザーには実臨床で使用されている製品を用い、ペリスタリックポンプにより回路を組み立て検討を行っていたが、平成29年度末に実臨床で用いる透析装置を入手しすることができ、平成30年度前半からはより良い条件でin vitro実験を行うことが可能となった。現在は、結合剤としてヘキサデシル基結合セルロース、シクロデキストリンなどを用いた実験を計画・進行中である。
3: やや遅れている
本研究においては、in vitro実験による吸着剤を透析液に加えた場合のタンパク結合性尿毒素の除去効率の評価を基盤データとし、動物実験によりin vivoにおける有用性の検討も行う計画であった。しかし、研究実績概要に記載したように、in vitro実験による基礎的検討を進める上での問題点の解決に時間を要しており、研究全体の進行計画に遅れが生じている。以上に理由から本研究の進捗状況を「やや遅れている」と判断した。
平成31年度には、in vitro実験による着剤を透析液に加えた場合のタンパク結合性尿毒素の除去効率の評価を最優先として研究を進める予定である。幸い、本研究開始当初に用いていたペリスタリックポンプに代わり、実臨床で用いていたHD装置を入手し使用可能となったため、今後の基礎的検討が進めやすくなると期待している。今後は、上述の検討を進め、タンパク結合性尿毒素の除去効率に与える透析液中の結合剤の影響に関する基礎的データ構築を完成させる予定である。
(理由)現在までの進捗状況等に記述したように、in vitro実験による基礎的データ収集に遅れが生じており、その結果として次年度使用額が生じることとなった。(使用計画)平成31年度には、可及的速やかにin vitro実験による基礎的データ収集を進める予定であり、そのための試薬購入費、実験資材購入費等に支出する予定である。
http://plaza.umin.ac.jp/~todaiyak/
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Scientific Reports
巻: 8 ページ: 11147
10.1038/s41598-018-29208-w