研究課題/領域番号 |
17K08438
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
辻 泰弘 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20644339)
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研究分担者 |
山本 善裕 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (70452844)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高齢者 / 肝・腎機能障害患者 / 抗菌薬 / 感染症 / 小児 / 薬物動態解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、①大規模患者集団を対象にヒトの成長・体格、生体生理機能(腎障害、高齢者、肥満および痩身)の個人差を考慮すること、②新しい薬剤疫学の手法として近年注目されている臨床ファーマコメトリクス (PMx) の手法を組み合わせること、③ ①と②に基づき抗菌薬の効果および血液毒性発現を予測する新しい抗菌化学療法を創出し、感染症治療を個別化および最適化することを目的としている。大規模な患者集団を対象に成長・体格、生体生理機能(腎障害、高齢者、肥満および痩身)の個人差を考慮し、新しい薬剤疫学の手法として近年注目されている臨床PMxの手法を組み合わせることで、抗菌薬の効果および血液毒性発現を予測する新しい抗菌化学療法を段階的に確立する。実験計画として、①大規模患者集団(腎障害、高齢者、肥満および痩身)のデータ収集および血中・感染組織中薬物濃度を定量すること(平成29年度)、② ①より抗菌薬の効果および血液毒性の定量値を基盤に臨床PMxモデルを構築すること(平成30年度)、③成長・体格、生体生理機能の個人差に基づいた個別化を図る抗MRSA薬に特化した投与設計ソフトウェアを開発し(平成31年度)、プロスペクティブに臨床適用することである。 平成30年度は、母集団薬物動態解析の手法を応用し、抗MRSA薬TEICの経時的な薬物血中濃度および有効性の指標であるC-反応性タンパク (CRP) 濃度の推移を同時に予測可能なPMxを公表した。また、双極性障害患者を対象にリチウムの尿細管再吸収機構を考慮したPMxを公表した。加えて、小児感染症患者を体重・体組成などの成長成熟度を考慮したPMxモデルを構築し、現在英文投稿中である。本申請研究は当初の予定通りに進捗しており、最終年度の研究実施計画である抗MRSA薬に特化した投与設計ソフトウェアの開発に着手している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度の予算により、高速計算ワークステーションを実装することができ、数理モデル計算時間が大きく飛躍することができた。研究分担者および研究協力施設との連携も順調であり、連絡調整段階に問題はない。研究第一段階として、新しい腎機能マーカーとして注目されているシステチンCによる抗菌薬の投与設計モデルをJ Infect Chemother 24, 284-291, 2018に公表した。平成30年度は感染症の有効性マーカーとして汎用されているC-反応性タンパクの動態を予測する薬物動態解析に着手し、個別化投与設計モデルを報告した (Clin Pharmacol Drug Dev, in press) 。また、リチウムの糸球体濾過及び尿細管再吸収過程を組み込んだモデルを構築し、リチウムクリアランスに対する尿pHの影響を明らかにした、さらに、リチウムによる副作用発現に関わる因子を探索し、その因子との関係性を評価した (Eur J Drug Metab Pharmacokinet, in press) 。加えて、0-16歳の小児感染症患者を対象に、患者の成長成熟度を考慮したPMxモデルを構築し、現在英文投稿中である。以上、現在の進捗状況は、当初の計画通りに進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度および30年度の2年間でデータを数理モデル化し、これをコンピューターで解析し、複数のファーマコメトリクス (PMx) モデルを構築し、英語論文および学会を通じて公表することに成功した。最終年度である平成31年度は、これまでに構築した臨床PMxモデルの妥当性をプロスペクティブに臨床検証しながら、医療現場で医師および薬剤師が自由に使用可能なソフトウェアを構築する。すなわち、本研究で構築した臨床PMxモデル式に基づく抗MRSA薬投与設計ソフトウェアを日本語で使用可能な状態としてweb上に公開し、研究成果を社会に還元する。 申請者は臨床薬物動態解析の世界的権威であるProf. Nicholas H.G. Holford(University of Auckland)のもとで日本人初の長期研究留学を行っており、現在も共同研究などで交流を継続している。本研究が予定通り進捗しない場合、即座に対応を協議し、研究実施計画の見直しを共同で実施することで、研究推進状況が滞らないように慎重に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年4月1日に所属研究機関を変更することになり、異動先で新しく試薬および消耗品等の物品購入が発生するために、次年度使用額が生じた。
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備考 |
2019年4月1日に所属研究機関を異動したため、現状、研究成果に関するwebページは作成されていない
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