研究課題/領域番号 |
17K08441
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
小林 亮 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 非常勤講師 (50555662)
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研究分担者 |
林 秀樹 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (00419665)
鈴木 昭夫 岐阜大学, 医学部附属病院, 准教授 (80775148)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 制吐対策 / オランザピン / 大腸癌 / 乳癌 |
研究実績の概要 |
悪心・嘔吐は癌化学療法において発現する頻度の高い有害事象のひとつである。近年、新規制吐薬が開発されたことや各国の学会等において制吐薬の使用についてガイドラインが策定されたことにより、制吐コントロールは劇的に改善が認められている。しかしながら、ガイドライン遵守の制吐対策を行った場合にも制吐コントロールが不良となる場合もしばしばある。 オランザピン(OLZ)は統合失調症、双極性障害の治療に用いられる薬剤である。OLZは多元受容体作用精神病薬に分類され、ドパミン受容体、セロトニン受容体、ヒスタミンH1受容体、ムスカリン受容体など複数の受容体に対して親和性を持つ薬剤である。近年の知見から海外のガイドラインにおいて、制吐薬としても使用が推奨されている。一方で、以前は本邦においては保険適応がなかったこともあり、その使用は限定的であった。 本研究ではOLZを使用した場合の制吐コントロールの改善状況および制吐薬としてのOLZの作用メカニズムの解明、OLZが使用不可の場合の代替薬剤の検討等を目的に検討を行っている。 平成29年度はガイドライン遵守の制吐対策を行った場合にも制吐不良となる高度催吐性抗がん薬を含むレジメンにおける制吐不良となるリスク因子の解析、およびOLZの追加効果について明らかとした。大腸癌患者においてシスプラチン(CDDP)による悪心発現のリスク要因解析を行った結果、高用量のCDDP(50mg/m2以上)が、悪心発現のリスク要因であることを明らかにした。乳癌のアントラサイクリン系/シクロホスファミド併用療法においては、年齢がリスク因子であることを明らかにした。またこれらのレジメンにおいてはガイドライン遵守の制吐対策にOLZを加えることで制吐コントロールが改善することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は臨床において、ガイドライン遵守の制吐対策を行った場合にも制吐不良となるレジメンについての制吐不良となるリスク因子を明らかにし、OLZを追加した場合の効果について明らかにすること目的で検討を行い、シスプラチン(CDDP)を含有するレジメンを施行した大腸癌患者および乳癌のアントラサイクリン系/シクロホスファミド併用療法(AC療法)を行った患者を対象に検討を行いCDDP含有レジメン施行大腸癌患者において、高用量のCDDP(50mg/m2以上)が、悪心発現のリスク要因であること、乳癌AC療法施行患者においては、年齢がリスク因子であることを報告した。またこれらのレジメンを施行した患者において、ガイドライン遵守の制吐対策にOLZを追加した場合に制吐コントロールが改善することを明らかにした。また基礎研究にてOLZのオランザピンによる悪心・嘔吐の改善メカニズムにグレリン分泌が関与する可能性についても検討を行っている。シスプラチン投与により投与後24時間後に血漿中グレリン濃度がシスプラチン非投与群と比較して有意に低下することを確認し、またシスプラチン投与と同時にオランザピンを経口投与することで、シスプラチン投与低下したグレリン分泌がオランザピン投与群で有意に改善することを確認しているが、その他のOLZ以外の薬剤、グレリン以外のレプチン等のホルモン類の影響についても検討中である。 以上より総合的に判断するとおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降も昨年度に引き続き、臨床におけるデータ収集および基礎研究におけるメカニズムの解明を行う。 臨床においては引き続き、OLZの制吐コントロール改善効果および追加使用すべき患者を明らかにする目的で、制吐不良となるレジメンにおけるOLZの追加による制吐コントロール改善効果および制吐コントロール不良となるリスク因子の解析を行う。さらにOLZが使用禁忌となる患者における代替薬の候補についても検討を行う。 また基礎検討においても、OLZの制吐薬としての作用メカニズムの解明を行う目的で、グレリン、レプチン等の食欲に関連するホルモンの影響に関する検討を引き続き行う。またOLZの作用メカニズムとしてドパミン受容体、セロトニン受容体、ヒスタミンH1受容体を関した経路についてもその阻害剤を用いて同様の検討を行うことでさらに詳細なメカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床におけるオランザピン効果の確認を優先的に行ったため、動物の購入費、維持費等が計画と比べて少なく経費が残る結果となった。これらの経費については翌年度以降に動物実験等の基礎研究を行う際に使用する予定である。
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