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2017 年度 実施状況報告書

高度腎機能低下患者におけるフッ化ピリミジン系抗がん薬の適正使用に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K08446
研究機関京都大学

研究代表者

松原 和夫  京都大学, 医学研究科, 教授 (20127533)

研究分担者 大村 友博  京都大学, 医学研究科, 助教 (00439035)
中川 俊作  京都大学, 医学研究科, 助教 (50721916)
今井 哲司  京都大学, 医学研究科, 講師 (80468579)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードスペシャルポピュレーション / フッ化ピリミジン系抗がん薬
研究実績の概要

透析患者の増加に伴い、透析時にがんや慢性疾患を発症し薬物治療が選択される機会が増加している。一般に、腎機能低下時には薬物の体内動態が大きく変動し、有害反応のリスクが上昇するとされるが、詳細な検討は行われないまま不明であることが多い。そのため、重篤な有害反応を生じうる薬物に関して、腎機能低下時における体内動態や有害反応のリスクを評価する研究を実施し、科学的根拠に基づいた薬物治療へとつなげることが重要な課題と考えられる。このような背景の下、本研究では、フッ化ピリミジン系抗がん剤に焦点を当て、腎機能低下時における体内動態の特徴を明らかにすることを目的とした。
フッ化ピリミジン系抗がん剤であるフルオロウラシルは、投与後肝臓において加水分解を受け腎臓から尿中排泄される。しかし、フルオロウラシルの代謝物は、腎機能低下時において排泄が遅延することが示唆されている。
本年度は、先行して行っていた研究成果の解析と情報収集を行なった。本研究では、フッ化ピリミジン系抗がん剤である5-フルオロウラシルは、最終的にフルオロ酢酸など毒性を持つ物質に変換されること、腎機能低下時にはこれらの代謝物の血液中濃度が上昇することを想定した。平成29年度は初めに、FDAより公開されている医薬品による副作用報告データベースを用いた検証を行い、腎機能低下と5-フルオロウラシルによる高アンモニア血症との関連性が十分に示唆されることを確認した。また、透析患者の血液中において5-フルオロウラシルの代謝物であるフルオロbetaアラニンやフルオロ酢酸が検出されることを発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究の遂行にあたり、腎機能低下患者における抗がん薬の使用実態を明らかにすることがまず重要であると考え、所属施設における実態調査を行なった。その結果、フッ化ピリミジン系抗がん薬であるフルオロウラシルは腎機能低下患者においても使用されることが少なくないことを明らかにした。また同時に、ヒト及びラット血清中においてフルオロウラシルやその代謝物を同時測定する分析手法を検討し、安定した測定系の確立を行うことができた。観察研究を優先的に行い、実験を伴う研究の着手に時間を要したため、当初の計画からはやや遅れているが、本研究の臨床的位置付けを明らかにすることができたと考える。

今後の研究の推進方策

これまでの研究より、腎機能低下はフルオロウラシルの代謝物の排泄遅延へとつながり、毒物であるフルオロ酢酸の生成および蓄積を惹起することが示唆された。そこで、フルオロウラシル並びにその代謝物の体内動態変動と腎機能低下の直接的な因果関係を証明するため、腎障害動物モデルである腎亜全摘出ラット、腎虚血再灌流障害ラットを用いた検討を行う。フルオロウラシル並びに代謝物の同時測定系を構築できたこと、腎疾患モデル動物の作成には十分な経験を有していることから、計画の円滑な遂行が可能と考える。
また、フルオロウラシルに関して母集団薬物動態解析などを行い、フルオロウラシルの体内動態に影響を及ぼす因子解明を目指す。本研究に必要なデータセットはすでに確定させたことから、この点についても円滑な計画遂行が可能と考える。

次年度使用額が生じた理由

平成29年度には、観察研究を行うことで腎機能低下と5-フルオロウラシルによる高アンモニア血症との関連性が十分に示唆されることを確認するとともに、透析患者の血液中において5-フルオロウラシルの代謝物であるフルオロbetaアラニンやフルオロ酢酸が検出されることを発表した。しかし、先行して行っていた研究成果の解析と情報収集を優先したため、消耗品費の支出が抑制された。しかし、平成30年度には実験を伴う研究を遂行するため、相当の経費が必要であり、当初予定どおりの経費支出が見込まれる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Chemotherapy in cancer patients undergoing haemodialysis: a nationwide study in Japan2018

    • 著者名/発表者名
      Funakoshi Taro、Horimatsu Takahiro、Matsubara Kazuo、Fukuhara Shunichi、Yanagita Motoko、Muto Manabuら
    • 雑誌名

      ESMO Open

      巻: 3 ページ: e000301~e000301

    • DOI

      10.1136/esmoopen-2017-000301

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Pharmacokinetic and Pharmacodynamic Markers of Mycophenolic Acid Associated with Effective Prophylaxis for Acute Graft-Versus-Host Disease and Neutrophil Engraftment in Cord Blood Transplant Patients2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshimura Kazuaki、Yano Ikuko、Yamamoto Takashi、Kondo Tadakazu、Kawanishi Misaki、Isomoto Yui、Yonezawa Atsushi、Takaori-Kondo Akifumi、Matsubara Kazuo
    • 雑誌名

      Biology of Blood and Marrow Transplantation

      巻: in press ページ: in press

    • DOI

      10.1016/j.bbmt.2018.01.040

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Accumulation of alpha-fluoro-beta-alanine and fluoro mono acetate in a patient with 5-fluorouracil-associated hyperammonemia2017

    • 著者名/発表者名
      Nishikawa Yoshitaka、Funakoshi Taro、Horimatsu Takahiro、Miyamoto Shin’ichi、Matsubara Takeshi、Yanagita Motoko、Nakagawa Shunsaku、Yonezawa Atsushi、Matsubara Kazuo、Muto Manabu
    • 雑誌名

      Cancer Chemotherapy and Pharmacology

      巻: 79 ページ: 629~633

    • DOI

      10.1007/s00280-017-3249-1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Population Pharmacokinetics of Topiramate in Japanese Pediatric and Adult Patients With Epilepsy Using Routinely Monitored Data2017

    • 著者名/発表者名
      Takeuchi Masato、Yano Ikuko、Ito Satoko、Sugimoto Mitsuhiro、Yamamoto Shota、Yonezawa Atsushi、Ikeda Akio、Matsubara Kazuo
    • 雑誌名

      Therapeutic Drug Monitoring

      巻: 39 ページ: 124~131

    • DOI

      10.1097/FTD.0000000000000383

    • 査読あり

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公開日: 2018-12-17  

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