研究課題
透析患者の増加に伴い、透析時にがんや慢性疾患を発症し薬物治療が選択される機会が増加している。一般に、腎機能低下時には薬物の体内動態が大きく変動し、有害反応のリスクが上昇するとされるが、詳細な検討は行われないまま不明であることが多い。そのため、重篤な有害反応を生じうる薬物に関して、腎機能低下時における体内動態や有害反応のリスクを評価する研究を実施し、科学的根拠に基づいた薬物治療へとつなげることが重要な課題と考えられる。このような背景の下、本研究では、フッ化ピリミジン系抗がん剤に焦点を当て、腎機能低下時における体内動態の特徴を明らかにすることを目的とした。フッ化ピリミジン系抗がん剤であるフルオロウラシルは、投与後肝臓において加水分解を受け腎臓から尿中排泄される。しかし、フルオロウラシルの代謝物は、腎機能低下時において排泄が遅延することが示唆されている。本年度は、先行して行っていた研究成果の解析と情報収集を行なった。本研究では、フッ化ピリミジン系抗がん剤は、最終的にフルオロ酢酸など毒性を持つ物質に変換されること、腎機能低下時にはこれらの代謝物の血液中濃度が上昇することを想定した。平成30年度には、動物を用いた検討から、フッ化ピリミジン系抗がん薬の腎排泄型代謝物が高アンモニア血症の原因となることを明らかにした。また、フッ化ピリミジン系抗がん薬およびその代謝物の体内動態を詳細に解析するため、それらの化合物を高感度に検出する測定系を確立した。
3: やや遅れている
平成30年度には、フッ化ピリミジン系抗がん薬による有害反応発現の機序を明らかし、バイオマーカーにもなり得る代謝物を明らかにするため、動物を用いた検討を進めた。その結果、動物を用いた検討については、当初計画通りに進展することができた。一方、臨床研究については準備段階であり、次年度において計画を進める予定である。
これまでの2年間において、前臨床における研究は計画通りに進めることができた。また、各薬物やその代謝物を高感度に検出する測定系を確立するに至った。臨床研究については準備段階であり、今後において計画を進める予定である。
平成30年度は、平成29年度に実験による検討が進まなかったことを受けて実験による検討を重点的に行った。その結果、次年度使用額は生じたが、概ね計画通りに用いることができたと考えられる。最終年度は、当初計画通りの使用を予定している。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件)
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