研究課題
透析患者の増加に伴い、透析時にがんや慢性疾患を発症し薬物治療が選択される機会が増加している。一般に、腎機能低下時には薬物の体内動態が大きく変動し、有害反応のリスクが上昇するとされるが、詳細な検討は行われないまま不明であることが多い。そのため、重篤な有害反応を生じうる薬物に関して、腎機能低下時における体内動態や有害反応のリスクを評価する研究を実施し、科学的根拠に基づいた薬物治療へとつなげることが重要な課題と考えられる。このような 背景の下、本研究では、フッ化ピリミジン系抗がん剤に焦点を当て、腎機能低下時における体内動態の特徴を明らかにすることを目的とした。フッ化ピリミジン系抗がん剤であるフルオロウラシルは、投与後肝臓において加水分解を受け腎臓から尿中排泄される。しかし、フルオロウラシルの代謝物は、腎機能低下時において排泄が遅延することが示唆されている。本年度は、先行して行っていた研究成果の解析と情報収集を行なった。本研究では、フッ化ピリミジン系抗がん剤は、最終的にフルオロ酢酸など毒性を持つ物質に変換されること、腎機能低下時にはこれらの代謝物の血液中濃度が上昇することを想定した。2019年度には、フッ化ピリミジン系抗がん薬およびその代謝物について、体内動態の変化および投与後における血中アンモニア濃度の変化に及ぼす腎機能低下の程度を明らかにすることを目的として、モデル動物による検討を進めた。その結果、フッ化ピリミジン系薬物の腎排泄型代謝物は、腎機能低下の程度に従って排泄遅延の程度が大きくなることを示した。また、フッ化ピリミジン系薬物投与後における血中アンモニア濃度の上昇は腎機能が高度に低下した際に顕著となることが明らかになった。
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