令和元年度は肺指向性・長期作用持続型ナノDDS製剤にHepatocyte Growth Factor (HGF) をコードしたプラスミドDNA (pCpGfree-hHGF) を内包した製剤を構築し、その有用性および安全性を評価した。調製した製剤において物理化学的性質の測定および透過電子顕微鏡 (TEM)による観察を行った結果、形状は球状型であり、粒子径約100nmのアニオン性微粒子が形成されていることが明らかになった。また、電気泳動で安定性を評価したところ、pCpGfree-hHGFの流出は認められず、pCpGfree-hHGFはナノDDS製剤の中に安定に包含されていることが示された。次に、マウスの肺線維芽細胞への取り込みおよびHGPの分泌を評価した。その結果、肺線維芽細胞に高効率に取り込まれ、HGFを分泌することを明らかにした。一方、細胞毒性は示さなかった。また、マウスの血液と混合させたが、凝集も引き起こさないことが確認できた。 そこで、肺線維症モデルマウスで薬理効果の検討を行った。肺線維症モデルマウスはブレオマイシンを経肺投与することで作製した。肺線維症モデルマウスに糖液(コントロール)あるいはpCpGfree-hHGFを内包した肺指向性・長期作用持続型ナノDDS製剤を投与した結果、pCpGfree-hHGFを内包した肺指向性・長期作用持続型ナノDDS製剤を投与した群で生存率が延長する傾向がみられた。しかし、肺線維症モデルマウスの病態にバラつきがあったため、現在モデルの見直しを行っている。安定したモデルの構築後に再検討を行う予定である。 補助事業期間において、肺指向性・長期作用持続型ナノDDS製剤の構築し、本製剤をプラスミドDNAおよびsmall interfering RNA (siRNA)へ応用することに成功した。プラスミドDNA、siRNAの両方に応用できることから、幅広い肺線維症治療薬に寄与できる可能性が示された。
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