研究課題
Contactin associated protein (Caspr) 4(以下、Caspr4)は、成体における特異的な神経細胞亜集団に発現していること、Caspr4遺伝子が自閉症の原因遺伝子であること、マウス神経幹細胞において発現し、神経分化に関与していることが報告されている。マウス胚性腫瘍(EC)細胞である P19細胞は,レチノイン酸(RA)により分化誘導され,神経細胞およびアストロサイトに分化することが知られている。本研究では、Caspr4のシグナル伝達を網羅的に調べる目的に、Caspr4を強制発現させたP19細胞からmRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を実施し、幹細胞増殖に関わる遺伝子群の低下がみられることを確認した。さらに、幹細胞維持に関わる遺伝子数種類ならびに神経分化に関わる遺伝子をRT-PCRまたはRealtime-PCRを用いたmRNAの変動を、Western blot法を用いたタンパク質量の定量を行い、その変動を合わせて確認した。結果、レチノイン酸処理したP19細胞株にCaspr4を強制発現させた細胞では、幹細胞維持に関わる遺伝子の発現の減少がmRNA及びタンパク質レベルで見られた。実際に、P19細胞株の細胞増殖能を検討したところ、Caspr4を強制発現させた細胞では有意な減少をみとめた。同時に、神経分化に関係する遺伝子を調べたところ、mRNA及びタンパク質レベルで、逆に優位な増加を認めた。幹細胞増殖に関わる遺伝子の変動によることが神経分化を促進している可能性が示唆された。今回得られた結果を踏まえて,さらにP19細胞増殖過程に関わる詳細なシグナル伝達の検討が必要である。
3: やや遅れている
本年度の計画に基づき、Caspr4強制発現により得られた変動遺伝子について、神経分化に関わるCaspr4応答遺伝子Gene Xを同定し、神経分化におけるCaspr4シグナルを解析する予定であったが、今後は、幹細胞維持に関わる遺伝子変動に焦点をあて、Caspr4応答遺伝子Gene Xを同定することを目指す。具体的には、幹細胞増殖に関わる遺伝子群のプロモーター活性の変動を検討する。
Caspr4が受容体として作用する報告は未だなく、細胞内において結合する分子の同定やCaspr4の下流シグナル伝達分子について詳細な報告はない。だが、相互作用するタンパク質を明らかにし、そのシグナル機構を明らかにすることは、新規医薬品の開発において有用な知見となるため、本研究の3年目は、神経幹細胞維持ならびに神経分化に関わるCaspr4応答遺伝子として同定されたGene Xの発現調節に関わるCaspr4シグナルを解析する。
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Pediatr Int.
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