研究課題
有害事象自発報告(SRS: spontaneous reporting system)は臨床での医薬品使用実態を反映したリアルワールドデータであり、医薬品開発時の臨床試験からは得られない貴重なデータセットである。我々は過去の研究において医薬品医療機器総合機構(PMDA)および米国食品医薬品局(FDA)が公開しているSRSを用いて種々の医療用医薬品および一般用医薬品(OTC医薬品)の有害事象プロファイルを明らかとしている。平成29年度は、主にSRSデータによる医薬品安全性評価を行った。具体的には、1)歯肉増殖のtime-to-onset分析とアソシエーション分析によるリスク因子の探索、2)抗がん剤の製剤の剤形による有害事象発症プロファイルの違い、3)低用量ピルの血栓塞栓系の有害事象のアソシエーション解析、4)産後うつ発症に関連する可能性のある医薬品の調査、5)OTC医薬品(総合感冒薬および解熱鎮痛薬)の配合成分の違いによる有害事象プロファイルの比較、6)光線過敏症のtime-to-onset分析と季節変動の存在、7)薬剤の多剤併用(ポリファーマシー)および加齢が、肝障害および腎障害リスクに及ぼす影響を明らかとした。さらに、8)OTC医薬品の有害事象プロファイル検討に際して、添付文書記載状況を調査しレギュラトリーサイエンス上の問題点を明らかとした。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度は9報の原著論文を社会に発信した。これらの成果は医薬品有害事象プロファイルをロジスティック解析、アソシエーション解析、time-to-onset解析、およびサブセット解析などの手法を駆使して多角的に評価したものであり医薬品適正使用に有用な知見と考える。
平成30年度は、有害事象自発報告(JADER )と厚生労働省が公開しているレセプト情報・特定健診等データベース等を組合せ、従来困難とされていた精度の高い有害事象リスク評価を行う。また、医薬品の化学構造式、物性データと有害事象の関連を評価するため、現在構築中のデータベースシステムと、JADERおよびFAERSデータベースとの統合化を図る。
オープンソース統計ソフトにより一部の解析を行い、今年度は有償解析ソフト購入の必要が無かったため,物品費の支出が少なかった。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (5件)
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