研究課題/領域番号 |
17K08452
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
中村 光浩 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (30433204)
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研究分担者 |
紀ノ定 保臣 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (50161526)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 医療ビッグデータ / 有害事象自発報告 / 市販後調査 / ファーマコビジランス / JADER / FAERS / 医療情報 / 医薬品適正使用 |
研究実績の概要 |
有害事象自発報告(SRS: spontaneous reporting system)は臨床での医薬品使用実態を反映したリアルワールドデータであり、医薬品開発時の臨床試験からは得られない情報を含む貴重なデータセットである。我々は医薬品医療機器総合機構(PMDA)および米国食品医薬品局(FDA)が公開しているSRSのJapanese Adverse Drug Event Report (JADER)およびFDA Adverse Event Reporting System (FAERS)を用いて、種々の医薬品の有害事象発現プロファイルを明らかとした。平成30年度は、主にSRSデータによる医薬品安全性評価を行った。具体的には、1)白金系抗がん剤の腎障害のリスク因子をtime-to-onset分析およびアソシエーション分析を用いて検討した。アソシエーション分析手法のSRSデータ解析への応用例は少ない。市販後における医薬品の使用は複雑であり,臨床試験とは異なり患者の背景因子が多様である。年齢、性別、併用薬およびその他の患者背景との関連性をアソシエーション分析により支持度およびリフト値を用いて評価することで、特定の薬剤の併用が白金系抗がん剤の腎障害発現に関連していることを示した。2)抗がん剤(パクリタキセル)の先発品とアルブミン懸濁型製剤による有害事象発現プロファイルの違いを検討した。3)疼痛治療薬(プレガバリン)による眠気や転倒リスクを検討した。4)産後うつに関連する医薬品等をFAERSを用いて探索した。5)電子タバコの有害事象の発生状況の調査を行った。6)高齢者の転倒に関連する医薬品のリスク評価を行い、多剤併用(ポリファーマシー: 睡眠薬、降圧薬、オピオイド、SSRIなどの併用)および加齢が転倒に及ぼす影響を明らかとした。さらに、7)日本での新薬申請状況を調査しレギュラトリーサイエンス上の問題点を明らかとするとともに、SRSの報告に、新薬承認の時期が及ぼす影響を検討するための基礎資料を得た。1-7)の研究内容は論文公開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は7報の原著論文を社会に発信した。これらの成果は医薬品有害事象プロファイルを、報告オッズ比、アソシエーション解析、time-to-onset解析、およびサブセット解析などの様々な解析手法を駆使して多角的に評価したものであり医薬品適正使用に有用な知見と考える。特に各医薬品の有害事象の発現時期プロファイルに関する情報は、医師、薬剤師、看護師などの医療従事者が、日常業務の中で患者の有害事象モニタリングを行う際に役立つ情報と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度も、引き続き医療従事者に有用な情報を発信していく。平成30年度に厚生労働省NDBオープンデータの医薬品使用に関する主なデータセットはデータベース化を完了した。令和元年度は、有害事象自発報告(JADER )と厚生労働省が公開しているレセプト情報・特定健診等データべース等と組み合わせた有害事象リスク評価を行う。医薬品の化学構造式および物性データと、JADERとのデータ統合も行いつつSRSの有害事象シグナルとの関連を探索していく。また、FAERSやJADERから見出したシグナルと、医薬品-標的タンパク質、医薬品-関連遺伝子などの相互作用情報のビッグデータ情報を合わせて評価することで、新しい創薬ターゲットを見出して行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
統計解析環境をオープンソースのソフトウェア「R」で可能な限り整備した。したがって、市販統計ソフト購入のための物品費の支出を削減できたために差額が生じた。
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