研究実績の概要 |
本研究は,”ナノディスク脂質構造体・バイセル“を新規医薬用ナノキャリアへ応用すべく,企図された.本年度は,hydrogenated soybean phosphatidylcholine (HSPC)/1,2-dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphoglycerol (DPPG) 混合体比の組成を変化させて脂質ナノ粒子(LNs)を調製し,その物性値を評価すると共に,Cryo-TEM,AFMを用いてそれぞれのナノ構造を解析することを目的とした. 脂質混合物HSPC/DPPG (10/0) (mol/mol) の粒子は凹凸のあるリポソーム, (10/2)ではディスク状粒子,(0/10) の粒子はミセルと思われる粒子がCryo-TEM画像から観察された. また, (10/1) の粒子は (10/0) と (10/2) の中間の形態が観察され, リポソーム, ディスク状粒子及びミセルという3つの異なる構造体が混在することが明らかとなった. さらに, 薬物封入の有無で構造に変化が見られないことが確認された. HSPC/DPPG (10/0) の粒子はNI濃度が低く, 約2週間で凝集物が観察された. また, (0/10) の粒子は調製直後のNI濃度は高いが, 約3週間で粒子から漏出したNIの結晶が観察された. さらに,HSPC/DPPG (10/0) の粒子がリポソームであることを確認するため, Cholを加えて粒子を調製した結果, 粒子表面が滑らかになり,リポソームであることを確認された. 以上より, 脂質混合体の構成比が変わることで,得られる構造体は変化するが,そのなかでも従来より我々が調製を行っている標準処方(10/2)により調製したNI-LNsは,最も安定性に優れたナノディスク脂質構造体であることが明らかとなった.
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