研究課題/領域番号 |
17K08464
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
小泉 直也 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (80433845)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 遺伝子治療 / がん / DDS |
研究実績の概要 |
本研究では、遺伝子治療に利用可能な治療用タンパク質拡散システムの構築を行う。遺伝子治療の最も大きなハードルは、一部の細胞にしか遺伝子が導入されず、発現した治療用タンパク質の効果が限定的なことである。そこで、導入した遺伝子が産生する治療用タンパク質を、周辺細胞へも拡散させることで、治療効果の増強が可能なシステムを開発することを目的とする。 平成29年度においては、殺細胞機能を有するコレラトキシンAサブユニット、およびクロストリジウムトキシンのN末端側サブユニット(共に細胞表面への結合能を欠損している)と、細胞表面拡散機能を持つアデノウイルスのノブタンパク質(ファイバータンパク質の機能ドメイン)との融合体を発現するプラスミドを作製した。また、これら融合タンパク質が培養細胞における拡散性を保持していることを確認した。さらに、融合タンパク質ががん遺伝子治療に利用可能か、担癌マウスを作製し、がん組織中へのプラスミド遺伝子導入を行い、腫瘍径の測定による抗腫瘍効果を確認した。その結果、コレラトキシンAサブユニットとの融合体が顕著な抗腫瘍効果を示し、その効果はコレラトキシンAサブユニット単独投与に比べ優位であった。また、クロストリジウムトキシンのN末端側サブユニットでは抗腫瘍効果は得られなかったことから、機能を保持した融合体の作製に適性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は研究計画通り、融合タンパク質の作製が可能であること、さらに細胞間の拡散機能が保持されており、培養細胞における機能評価も達成された。また研究の進展が早かったことから、研究予算の前倒しを利用し、平成30年度に計画予定であったマウス固体を用いた抗腫瘍効果に対する検討もおこなった。その結果、in vivoでのがん遺伝子治療戦略での抗腫瘍効果の増加が得られることを明らかとした。これらの成果は、研究計画の根幹であり新たな遺伝子治療戦略のコンセプトを証明するものである。さらなるin vivoにおける検討と、抗腫瘍効果のメカニズムの解析は必須の検討課題であるが研究課題に対する目的をおおむね達成した成果と考えられ、おおむね順調に研究が進展していることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況にも示したように、担癌マウスにおけるがん遺伝子治療実験による抗腫瘍活性をこれまでに明らかとしていることから、今後は詳細なメカニズムの解明を行う。具体的には、遺伝子導入後に、癌組織を回収し、融合タンパク質の分布について組織切片および免疫染色により明らかとすることで、生体中での治療効果だけでなく、メカニズムとともに安全性の予備的な情報を得る。 現在臨床研究や諸外国での承認治療薬として用いられている遺伝子治療薬の問題点の一つに、正常細胞への遺伝子導入と導入遺伝子による遺伝子毒性が挙げられる。そこで、抗腫瘍効果だけでなく、各組織への遺伝子産物の分布と組織障害についても検討し、安全性評価の予備的な検討も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前倒し支払請求をおこない、実験動物を用いた検討を行った。研究費の有効な使用を目的に経費の節約を試みた結果、当初予算よりも低い金額で検討することが可能となったため、予算が次年度へ繰り越されることとなった。 次年度使用額は、当初の予定通り、他の実験動物を用いた抗腫瘍効果のメカニズム解明のために使用する予定である。
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