研究実績の概要 |
本年度に外科的に切除された乳がん組織を、熱可逆性ハイドロゲル(TGP)を用いて三次元培養し、より生体内と近い条件で乳がん組織に対するヒ素化合物(亜ヒ酸ナトリウム、二硫化二ヒ素)とテトランドリン(Tetra)の単独および併用効果を以下のように検討した。 ①細胞毒性の観点からの検討:WST法により、薬物の単独、および併用が、乳がん組織の生存に対する明らかな影響を与えられなかった。その原因はまだはっきりされていないものの、一つ目は入手された乳がん組織自身の活性が低かった可能性が考えられる一方、設定された薬物の濃度が低かった可能性が考えられた。 ②細胞分誘導の観点からの検討:ICAM-1は、乳腺上皮細胞の分化マーカーとして知られている。all-trans-レチノイン酸(ATRA)の処理により、ヒト乳がん細胞であるMDA-MB-231の細胞表面におけるICAM-1の発現誘導がしっかり確認され、乳がん細胞の分化誘導ポジティブコントロールとして確立された。ヒ素化合物、Tetraの単独、および併用によりMDA-MB-231におけるICAM-1の誘導の有無を引き続き検討する。 ③Cytometric Bead Array(CBAアッセイ)を用いて、上記三次元培養の培養上清中のIL-6, IL-10, IL-17A, TNF, IFN-γおよびTGF-βの測定系を確立した。薬物の処理により、各種サイトカインのある程度の量的変動をもたらした。 ④ヒト乳がん由来組織の担がんモデルマウスを作製するために、まずMDA-MB-231担がんモデルマウスの腫瘍組織の一部をヌードマウスに接種し、培養がん細胞ではなく、腫瘍組織からの担がんモデルマウスの作製を試みた。
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