研究課題
平成29、30年度に続き、加熱可逆性ハイドロゲル(TGP)を用いた3次元培養法で、より生体内と近い条件下で、ヒト乳がん組織に対するヒ素化合物とテトランドリン(Tetra)の単独および併用効果を検討した。また、positive controlとして既知の抗がん剤の効果も合わせて検討した。さらに、乳がん細胞(MDA-MB-231、MCF-7、T47D)に対する両薬物の効果をより詳細に検討し、下記の成果が得られた。①高濃度(mMオーダー)の上記既知抗がん剤は、がん組織の生存を顕著に抑制したが、低濃度(nMオーダー)の場合はむしろがん組織の生存を助けた結果となった。一方、ヒ素化合物とTetraの単独、および併用ががん組織の生存を抑制する傾向が観察された。②ヒト乳がん組織片をヌードマウスへの移植手術法を確立したが、患者腫瘍移植マウスモデル(patient-derived tumor xenograft:PDTX)作成の成功に至らなかった。高度免疫不全マウスを使用し、さらなる検討が必要であると考えられた。③ヒ素化合物とTetraの処理により、3次元培養上清中のIL-6とIL-10の分泌量が抑制される傾向が示された一方、IL-17AとTNFの分泌量が促進された傾向が見受けられた。④ERKの活性化を介し乳がん細胞に分化誘導した両薬物は、健常人由来PBMCの細胞生存率に影響を与えなかった。また、JNKおよびオートファージが両薬物に誘導される乳がん細胞のS-phase arrestに寄与することが明らかとなった。以上の研究成果から、ヒ素化合物とTetraの併用は乳がん組織からの炎症性サイトカインの分泌に影響を与えると共に、がん細胞の分化誘導、細胞周期アレストを介し、抗がん作用を発揮することが示唆された。今後高度免疫不全マウスから作成されるPDTXを用いて、さらなる研究が必要であると考えられた。
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