研究課題/領域番号 |
17K08466
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
花輪 剛久 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (00302571)
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研究分担者 |
河野 弥生 東京理科大学, 薬学部薬学科, 助教 (50711660)
廣木 章博 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員(定常) (10370462)
田口 光正 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員(定常) (60343943)
佐藤 光利 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (60231346)
本間 真人 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90199589)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ハイドロゲル / 多孔性 / 電子線照射 / 凍結融解法 |
研究実績の概要 |
本研究課題では多孔性ハイドロゲルを調製する方法として電子線照射による架橋を予定している。本年度はこの方法に加え、凍結融解法による架橋について検討した。素材として高い生体適合性を持ち、耐酸性・耐塩基性・耐薬品性に優れる合成高分子であるポリビニルアルコール(PVA)のハイドロゲルに着目し、2種類のPVA(ExcevalおよびPoval)を用いて、種々の調製方法によりPVAハイドロゲルを調製を試みた。 1.ハイドロゲルの物性評価:凍結融解法で調製したハイドロゲルの物性評価の結果から、濃度および凍結融解回数の増加に伴い、ハイドロゲル内の架橋部分の構造が密となり、膨潤度が低下する一方で、高い強度を有するハイドロゲルを形成することが明らかとなった。一方、Excevalを用いて電子線照射法によりハイドロゲルを調製したところ、凍結融解法と同様、濃度および電子線照射量の増加に伴い、膨潤度が低下する一方で、より高い強度を有するハイドロゲルを形成した。これらの結果から、凍結融解法は電子線照射装置のような特殊な装置を使用することなく、簡便に調製可能な方法であることが明らかになったため、以降の実験は10% Exceval凍結融解ハイドロゲルを用いて行った。 2.色素および医薬品含有ハイドロゲルの物性評価 TAR含有10% Exceval凍結融解ハイドロゲルからのTARの放出挙動は、凍結融解回数により異なる挙動を示し、放出に伴うハイドロゲル中の薬物の拡散様式が異なることが明らかとなった。また、ハイドロゲル中のTARは120 minまでに全量放出された。NM含有10% Exceval凍結融解ハイドロゲルからのNMの初期の放出挙動はTARと同様の放出挙動を示したが、一定時間経過後は減少傾向を示し、系中のNMが一部加水分解しているものと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
使用する素材のハイドロゲルを電子線照射および凍結融解法により調製可能であることが明らかになり、2年目以降は鋳型の作成も含め、多孔性ハイドロゲル調製に着手できる状況にあることから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)多孔性ハイドロゲルの調製 使用するハイドロゲル製剤は内部に医薬品を担持し、かつ、口腔粘膜に付着する性質を有する必要がある。平成30年度はゲル表面に細孔を有し、粘膜に貼付する際に内部の空気を押し出すことにより、細孔内部が陰圧になり、吸盤と同様の原理で粘膜付着性を有するハイドロゲルの調製を試みる。PVA、PVPなどの水溶性高分子を単独で、またはそれらを混合した溶液を、凹凸を有するプラスチック製鋳型(mold)に流し込み、電子線により架橋する。 (2)ゲルの物性評価 i)基本物性評価:得られたハイドロゲルの強度、展延性などの基本物性をレオメーターにより評価する。また、温度変化に伴う性状変化を示差走査熱量測定(DSC)により観察し、それらの結果を製剤処方、照射条件にフィードバックし、最適な条件を確定する。 ii)ハイドロゲルの粘膜付着性評価:剥離試験:調製したハイドロゲルの粘膜付着性をガラスプレートおよびムチン溶液を展開したフィルターを対象とし、クリープメーターによる付着強度の測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた研究分担者の打ち合わせに伴う出張などが行われなかったため、当初配分した予算額の残額を次年度に繰越し、次年度購入予定物品の購入、論文投稿費用等に充当する。
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