研究課題
ハイドロゲルの持つ柔軟性は、潰瘍部分の形に合わせて自在に変形可能である。また、薬物を担持・放出できることから、今年度の研究として、口腔粘膜炎に有効とされる亜鉛を含有するハイドロゲルを調製できれば、口腔粘膜炎の炎症部位に貼付しやすく除去しやすい製剤を開発することができるのではないかと考えた。ハイドロゲルを調製する方法には、化学的架橋法と物理的架橋法が知られているが、化学溶剤を使用しない物理的架橋法に着目した。物理的架橋法として凍結融解法や電子線照射法が知られているが、本研究では、水溶性高分子としてポリビニルアルコール(PVA)に着目し、電子線照射法によるハイドロゲル調製を試みた。電子線照射法は、ポリマー水溶液に電子線を照射することにより、ポリマー鎖状にラジカルが生じ、異なる鎖のラジカルが結合することにより架橋が形成される。そこで本研究では、電子線照射法を利用して塩化亜鉛含有PVAハイドロゲルを調製、物性を評価し、口腔粘膜炎用製剤への応用の可能性を評価した。PVA濃度が10 w/v%、塩化亜鉛濃度が0または50 w/v%となるよう混合した溶液を、厚み1 mmとなるよう容器に充填した後、30 kGyまたは50 kGyの電子線を照射し、ハイドロゲルを調製し、ゲル分率、膨潤度、SEMによるハイドロゲル表面形態の観察、付着試験、引張破断試験、薬物放出試験などの物性評価を行った。その結果、いずれの方法においてもゲル化が認められ、吸水膨潤挙動およびゲル強度特性から薬物担体として、また、口腔内の貼付型製剤として応用可能とする結果が得られた。
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YAKUGAKU ZASSHI
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https://doi.org/10.1248/yakushi.19-00121-2
Biotribology
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