研究課題
高難溶性薬物の溶解性向上を簡便に図ることができる新規薬物担体のキュービック相(立法液晶相)をもつキューボソーム製剤の評価にも利用できるX線吸収端近傍構造測定法(XANES)に着目した。医薬品に含まれていることも多いCl元素に着目し、医薬品原薬の塩酸塩結晶、およびClがC原子と共有結合している医薬品原薬について、Cl-K吸収端XANES測定をあいちシンクロトロン光センターで進めた。XANESスペクトルの形状は、医薬品原薬によりそれぞれ固有の形状を示していた。Cl-K吸収端のエネルギーとそのエネルギーでの吸光度、あるいは最大の吸光度を示すピークのエネルギーとそのエネルギー値と吸光度をプロットすると、Clがイオンかそれとも共有結合を形成しているか、さらにはClが共有結合している原子が芳香族性C原子か飽和C原子かにより、グループ分けできることが明らかとなった。医薬品原薬の塩酸塩結晶について、XANES領域である 2823 eV から 2860 eV のスペクトル間の決定係数を計算したところ、結晶中のClイオンと医薬品原薬の陽イオン基あるいは溶媒分子との相互作用様式やClイオンの近傍に存在する原子種などに共通する特徴が見られる結晶試料間ではXANESスペクトルの決定係数が高い傾向が見られた。こうしたプロットあるいはXANESスペクトル間の決定係数を計算する定量的な手法を用いることで、医薬品原薬中のClの化学的状態やその周囲の化学的環境を迅速かつ簡便に推定あるいは同定できる可能性が考えられた。XANES測定法は医薬品原薬あるいは医薬品製剤の新しい評価法として利用可能と期待できる。
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