研究課題/領域番号 |
17K08468
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
橋崎 要 日本大学, 薬学部, 准教授 (60318459)
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研究分担者 |
藤井 まき子 日本大学, 薬学部, 教授 (50199296)
三浦 基文 日本大学, 薬学部, 准教授 (60385979)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スマートゲル製剤 / 経鼻投与製剤 / レシチン逆紐状ミセル / リポソーム架橋ゲル / レオロジー |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、各種スマートゲル製剤を調製し、製剤学的性質の評価、粘膜付着性の評価、薬物の吸収性の評価を行った。 レシチン逆紐状ミセルは、レシチン、オイル、少量の水を混合して調製した。市販のスプレー容器を用いて、レシチン逆紐状ミセルの噴霧条件の探索を行い、いくつかのレオロジーパラメータとの間に相関性を認めた。また、鼻粘膜の代わりに角質層を除去したユカタンミニブタ(YMP)皮膚を用いて、FITC-デキストラン(分子量:約4,000)を配合したレシチン逆紐状ミセル製剤を適用したところ、FITC-デキストランが膜内に移行していることが確認された。 一方、リポソーム架橋ゲルは、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース(疎水化HPMC)をリポソーム懸濁液に作用させて調製した。疎水化HPMCの疎水基は炭素数が18または12のアルキル基で、市販品または当研究グループで合成したものを使用した。リポソームと疎水化HPMCからなる混合液中の疎水化HPMC濃度が一定の場合、混合液の粘度はリポソームの脂質濃度に依存して急激に上昇することがわかった。また、小角X線散乱測定より、リポソームはゲル中に構造を維持したまま存在していることがわかった。 また、製剤の表面張力値とYMP皮膚の表面自由エネルギーの値を用いて、Owens-Wendt-Rabel-Kaelble(OWRK)法に基づく計算から製剤の皮膚に対する濡れ性と付着性を予測する方法を考案した。現在、鼻粘膜モデルを用いて解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レシチン逆紐状ミセルからなるゲルの噴霧化には成功したが、このゲルにFITC-デキストランを配合すると噴霧し難くなることがわかった。この理由は、ゲル製剤中にFITC-デキストランが懸濁しているために、スプレー噴霧に必要な剪断速度に達していない可能性が疑われた。そこで、製剤中のFITC-デキストランを微細化するための新たなレシチン逆紐状ミセル調製法を開発した。 また、リポソームゲル製剤においては、市販のスプレーポンプの吸い込み能力では粘度の低下が不十分であり、噴霧化は難しいことがわかった。 この様な理由から、当初予定していたラットを用いたin vivo実験に進めないでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況を踏まえ、まずはゲル製剤の鼻腔内噴霧に影響を及ぼすレオロジーパラメータを探索し、ゲル製剤の最適化方法を見出す。この検討には、3Dヒト鼻腔透明モデルを用い、製剤の付着面積を噴霧時の広がり具合の指標とし、各種レオロジーパラメータとの相関性を検討する。また、ゲル製剤の粘膜付着性については、OWRK法を用いた検討ならびに人工膜を用いた検討を行い、粘膜に対する付着性やぬれ性を評価する。これらの結果を基に、スマートゲル製剤の最適化を行う。 また、上記検討が順調に進んだ場合、実際にスマートゲル製剤が鼻腔投与で薬物の吸収を促進するかをラットを用いた動物実験で評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会での発表を予定していたが、国内学会に変更したため未使用額が生じた。また、ラット鼻粘膜適用実験を行う予定であったが、次年度に延期したため未使用額が生じた。 今年度は、ゲル製剤の調製のために試薬、プラスチック類、ガラス類等の消耗品を購入する。ゲル製剤の鼻腔内噴霧実験のために、3Dヒト鼻腔透明モデルを購入する。薬物吸収性および粘膜付着性を評価するために、ユカタンミニブタ皮膚を購入する。また、In vivo実験のために実験動物を購入する。さらに、成果発表のために、学会旅費、校閲費、投稿料等が必要である。
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