本研究では、ランゲルハンス細胞(Langerhans cells; LCs)およびマスト細胞(mast cells; MCs)の抗原提示能を同時に制御することで、抗原特異的Th2細胞分化を阻害する薬物を既存の抗アレルギー薬の中から見出し、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)の根治を目指した新たなアレルギー治療戦略に結びつく情報を得ることを目指した。 最終年度は、第2世代抗ヒスタミン薬のエメダスチンを外用薬として用い、NC/NgaマウスのAD様皮膚炎に対する治療効果を検討した。その結果、エメダスチンは急性期から慢性期の皮膚炎に対して安定した治療効果を示した。また、その治療効果は、血清中の総IgE濃度の低下と局所リンパ節におけるTh1/Th2細胞分化阻害能ともよく相関していた。しかし、エメダスチンの治療効果をステロイド薬のベタメタゾンと比較した場合、皮膚炎の制御能、IgE産生の抑制能、生体内でのTh1/Th2細胞分化阻害能のいずれも、ベタメタゾンに劣っていた。 研究機関全体を通して、本研究では抗アレルギー薬の中でも特にエメダスチンを外用薬として用いることで、NC/NgaマウスのAD様皮膚炎に対して最も優れた治療効果を発揮することを明らかにした。また、その治療効果は、LCsを介する二次リンパ組織でのTh1/Th2細胞分化阻害とそれに引き続いて生じる皮膚炎症部位でのTh1/Th2免疫応答阻害、さらにはMCsを介する皮膚局所でのTh1/Th2細胞分化阻害とそれによる免疫応答阻害に基づくものであることを明らかにした。さらに、エメダスチンは皮膚への毒性もなく、MCsからのケミカルメディエーター放出も抑制するため、ステロイド薬と合わせて外用薬として用いることでステロイド薬単独では得られない薬効が期待された。
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