研究課題/領域番号 |
17K08473
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
服部 尚樹 立命館大学, 薬学部, 教授 (80288828)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マクロTSH血症 / ホルモン自己抗体 |
研究実績の概要 |
1、妊婦における甲状腺ホルモン補充療法の適用に関する研究:浜田産婦人科の合阪幸三先生との共同研究。妊娠可能年齢女性におけるマクロTSH血症の頻度と病態を解明し、米国甲状腺学会official journalであるThyroidに受理された(Thyroid. 28, 1252-1260, 2018)。診断の方法は、まずポリエチレングリコール(PEG)法でスクリーニングし、PEG沈降率が70%以上の血清をゲル濾過法、Protein G法で確認し、ヒト抗マウス抗体(HAMA)blockerでHAMAの存在を検討した。305人のTSH>2.5mU/LでfT4正常の40歳以下の女性において3人のマクロTSH血症患者が存在した。また、24人の女性でヒト抗マウス抗体(HAMA)またはheterophilic antibodiesによる見かけ上の高TSH血症が認められた。また、3名のマクロTSH血症の内、2名が抗ヒトTSH自己抗体によることが明らかとなった。甲状腺ホルモン補充療法を考慮する際、マクロTSHおよびHAMA/heterophilic antibodiesの存在に注意する必要があることを明らかにした。 2、卵胞刺激ホルモン(FSH)についても、高FSH血症の患者で同様の病態が存在する事を明らかにし、研究内容をENDO2019にて発表した。 3、インスリン使用糖尿病患者における最適インスリンを提案出来るin vitroシステムの確立:インスリン抗体を有する患者血清とインスリンアナログをインキュベート後、Dextran Charcoal法にて結合率を求めるin vitro系を確立した。外因性に加えたインスリンと抗体との結合が認められたが、今のところ結合しにくいインスリンアナログを特定できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、マクロTSH血症について、妊娠可能年齢女性で検討し、その結果を米国甲状腺学会のofficial journalであるThyroid (impact factor 7.557)にて発表出来た。この中で、マクロTSH血症の診断においてHAMA以外にheterophilic antibodiesも除外する必要があることを明らかにし、マクロTSH血漿の診断基準を確立出来た。 2、他大学附属病院の医師から検討を依頼された検体で、マクロFSH(卵胞刺激ホルモン)を見いだし、米国内分泌学会で発表出来た。 3、Dextran-Charcoal法を用いて、外来性インスリンアナログに対する糖尿病患者血中インスリン抗体の結合能を検討するin vitroの系を確立出来た。
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今後の研究の推進方策 |
1、マクロTSH血症を見逃すと一生涯に渡って甲状腺ホルモンの補充療法が続くため、その診断は極めて重要である。マクロTSH血症は新生児におけるクレチン症のスクリーニングおいても影響する可能性があり、浜田産婦人科との共同研究で調査を実施する。 2、マクロFSH血症について更に検討を加え、論文にまとめる。 3、インスリン抗体を有する糖尿病患者における最適インスリンの評価について論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に実験補助の助手を雇用する必要が生じたため。
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