研究実績の概要 |
申請者は、これまでにFood and Drug Administration(FDA)が公開している有害事象自発報告データベース(AERS: 2004-2015, 6,153,696件)を用いた解析から、アミオダロンでは、NASHの有害事象シグナルが検出され、副作用としてNASHを高頻度に誘発する可能性を明らかにしている。今年度は、アミオダロンの有害事象としてNASHが生じた症例のより詳細な解析を実施した。その結果、性別では、男性51名、女性47名、年齢(中央値)は65歳であった。これより、アミオダロンによるNASH発症は高齢者において高い傾向にあるが、性別には大きな差はないと考えられた。次に、アミオダロンによるNASH発症のカットオフ値を明らかにするため投与期間と累積投与量に着目して解析した。しかし、AERSは自発報告データベースであるため、これらの情報が収集されていない症例が存在し、解析に十分な症例数が得られずカットオフ値を算出するまでには至らなかった。予備的な結果ではあるが、得られた症例から、一日の投与量としては200mgを服用していた症例が約70%と大部分を占め、服用期間(中央値)は356.5日であった。アミオダロンの1日200mgの投与は欧米・本邦における治療維持期の概ね至適用量に該当する。すなわち、アミオダロンによるNASH発症には長期的な服用がリスクとなる可能性が考えられた。さらに、マウスにアミオダロンを経口投与することで肝臓に脂肪沈着が生じることを確認した。今後、このアミオダロン誘発NASHモデルマウスを用いて、NASH発症機序の解明を行う予定である。
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