2020年度は、肺集積性を規定するエクソソーム表面に発現する因子探索を目的とし、昨年度、担癌時間依存的に増加する候補分子2種について、その分子と肺集積性の因果関係に関する検討を行った。エクソソームへのタンパク高発現を目的としたプラスミドベクターを用い、メラノーマ細胞へのトランスフェクションにより、その培養上清からエクソソームを抽出することで候補分子高発現エクソソームを調製した。発現量の確認にはウェスタンブロッティング法を用いた。この候補分子高発現エクソソームにインドシアニングリーンを封入することで蛍光標識を行い、マウスに静脈内投与後の蛍光色素の体内分布について分子イメージング装置を用いて評価を行った。その結果、対象群と比較しその候補分子高発現エクソソームは、肺集積性を示す傾向にあった。現在、引き続き再現性を確認すると共にこのエクソソームを用いてsiRNAを封入し、肺転移がんの治療効果についての検討を実施している。 また、肺集積性エクソソームががん細胞由来エクソソームであるとの想定から、集積効率を高めるため、血清から抽出される総エクソソームからがん由来エクソソームのみを単離する方法を検討した。がん細胞特異的発現分子に対する抗体を固定した磁気ビーズを用いた回収法により自己血清から自己のがん細胞由来エクソソーム回収を可能にした。これについても引き続き再現性を確認し、メラノーマ細胞以外の細胞でも同様に回収が可能かを検討する予定である。
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