ロバスタチン応答エレメントの解析が上手く進行できなかったため、シスプラチン耐性細胞ではグルタチオンの合成が亢進していることから、スタチンがグルタチオン合成系を阻害するか検討した。 マイクロアレイ結果のうち、耐性細胞でglobal normalizationした値が50以上、耐性細胞で4倍以上発現が増加していたmRNAは17種類あり、その中でUBE2L6に着目した。シスプラチン処理によりUBE2L6は誘導されるが、20μM 24時間添加したHela細胞のmRNA量はHCP4(シスプラチン0μM)と比較し非常に少なかった。Hela-OEのシスプラチンに対する感受性はコントロールと比較し差がなかったが、HCP4-shUBE2L6は10μMでシスプラチンに有意に感受性を示した。ABCB6の発現量は耐性細胞で高発現し、UBE2L6のknock-downによりABCB6のmRNA発現が約20%抑制された。UBE2L6を抑制した細胞ではABCB6のプロモーター活性は約30%低下していた。 シスプラチン感受性はUBE2L6の発現を抑制すると改善するが、過剰発現させても変化しないことより、他の因子を介在していると考えられた。HCP4-shUBE2L6のマイクロアレイ結果よりUBE2L6に関連して変化する遺伝子としてABCトランスポーターの一つであるABCB6が挙げられた。HCP4-shUBE2L6細胞で、ABCB6遺伝子はmRNAの発現、プロモーター活性ともに抑制されており、ABCB6はUBE2L6により転写調節され、シスプラチン耐性に関与していると考えられた。 シスプラチン耐性細胞で高発現している遺伝子の一つにUBE2L6を初めて同定した。UBE2L6はABCトランスポーターの一つであるABCB6の発現を誘導し、シスプラチンを細胞外に排出することで耐性化に関わっている可能性が示唆された。
|