研究実績の概要 |
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)および中毒性表皮壊死症(TEN)は免疫系を介する重篤副作用である。近年、被疑薬毎にSJS/TEN発症と関連するヒト白血球抗原(HLA)多型があることが明らかとなってきた。低分子薬物が異常免疫応答を誘導する機序としては、薬物が体内のタンパク質に結合し抗原性を得るというハプテン仮説の他に、薬物が免疫系の受容体と直接相互作用するというp-i仮説、薬物がヒト白血球抗原に提示されるペプチドの種類を変えるというAltered peptide repertoire仮説が提唱されている。 本研究では、SJS/TEN発症機序の解明を行うことを目的とし、HLAとの関連が明らかとなっている複数の被疑薬とHLAの組み合わせについて、1)被疑薬と関連HLAタンパク質との分子間相互作用解析装置Octetを用いた親和性評価、及び2)可溶性HLA発現C1R細胞とLC-MSを用いたHLA提示ペプチドの網羅的解析を行った。 その結果、複数の被疑薬と関連するHLAタンパク質との組み合わせについて、その解離定数を比較評価することができた。また、可溶性HLAを発現するC1R細胞から、HLA-B2M-ペプチド複合体を精製するプロトコルを確立した。この系を用いて、HLA-A*02:06、HLA-B*15:02、HLA-B:51:01提示ペプチドをそれぞれ1,000種類以上同定した。HLA-B*02:06提示ペプチドに対してアセトアミノフェンまたはロキソプロフェン処理の影響を、HLA-B*15:02、HLA-B*51:01提示ペプチドに対して抗てんかん薬処理の影響を、それぞれ解析した。その結果、特定の薬剤とHLAたんぱく質の組み合わせにより、特殊なペプチドの提示が誘導されることを見出した。
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