研究実績の概要 |
近年,日本の医療現場では多剤併用(ポリファーマシー)が問題となっている.この中でも難治てんかんは発作を抑制するために,複数の抗てんかん薬を長期間服用する必要があり,有害事象のリスクマネージメントが極めて重要である.国立病院機構静岡てんかん・神経医療センターにおいて2,000~5,000人規模のコホートデータを利用し,抗てんかん薬による高アンモニア血症と脂質異常症の発症リスクを明らかにしてきた.本研究は2006年1月から2017年12月までに静岡てんかん神経医療センターを受診した患者を対象とした大規模コホートデータを構築し,抗てんかん薬による薬疹,血液障害,電解質異常,肝障害の発現率とその危険因子を明らかにすることを目的とした. 現在、2018年12月までデータ収集期間を延長し,てんかん患者25,419名292,088ポイントの採血データを収集した.14,620名の成人てんかん患者(18~102歳)を対象として抗てんかん薬による低ナトリウム血症の発症リスクを明らかにした.併用抗てんかん薬数が増加するほど血清ナトリウム値は有意に低下し,抗てんかん薬と抗精神病薬の併用によって重篤な低ナトリウム血症の発症リスクが4倍上昇した.さらに,カルバマゼピンとバルプロ酸を同時に併用することで発症リスクが17倍し,抗てんかん薬のポリファーマシーは重篤な低ナトリウム血症の発症に関連することを明らかにした.さらに,小児てんかん患者(18歳未満)10,124名を対象としたところ,同様の結果が得られた.
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