本研究の目的は2型糖尿病患者でGLP-1製剤による治療での心血管イベントに対する有用性を刺激伝導系への作用を中心に検討することである。 方法は、心磁図はGLP-1製剤投与前、投与24週後で施行。解析方法は、①64チャンネル信号ノイズ除去し加算平均。②体格や計測距離への影響を除去するため、信号強度を 正規化する。③電流密度に変換し、各時相の最大電流を抽出する。④7時相を選択し、電流アロー図を作成。⑤13個のパラメーターを抽出し解析した。 GLP-1製剤の投与の先行する10例で心磁図の予備解析検討を行った。GLP-1製剤投与前後で、PQ時間(ms)前:188.0→後:178.5、QRS時間(ms)前:102.9→後:103.4、 QT 時間(ms)前:394.2→後:382.6、P波peak強度(pT/m)前:1.75→後:1.68、R波peak強度(pT/m)前:13.68→後:13.27、T波peak強度(pT/m)前:4.38→後:4.37、P 波角度(°)前:37.38→後:51.91、 R波角度(°)前:39.06→後:24.18、 T波角度(°)前:56.03→後:85.27 の結果であり、検討した解析結果では、GLP-1製剤投与前後で明らかな変化は認められなかった。 そのため、健常群と糖尿病群での心磁図について追加検討を行った。心磁図は微小な電気生理学的現象に感受性が高いことが特徴の一つである。虚血性心疾患では心筋虚血による心筋障害により、心室再分極相の積分値(JTi、JTi/QRSi)の減少が知られている。心室再分極相の積分値(JTi、JTi/QRSi)に関して、健常群とDM群の2群間、さらに健常群とDM群をIHDの有無での3群間での比較追加解析を行ったが、有意な結果は認められなかった。 今回の研究では、2型糖尿病患者におけるGLP-1製剤治療で、心磁図を用いて刺激伝導系への作用を検討した。心血管イベント抑制に関する機序の解明には至らなかったが、糖尿病患者の心血管イベント抑制は重要な課題である。
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