研究課題
多細胞生物は、細胞たちが三次元的に積み重なることで構成されている。この際の「細胞たちの間に働いている力」が、再現性の高い積み重なり、すなわち再現性の 高い組織・器官発生を保証することが近年判ってきた。脊椎動物の脳の発生過程では、前駆細胞たちで作られた上皮構造に、(前駆細胞から生まれた)神経細胞が積層する。本研究では、<1>大脳原基の細胞の物性、および<2>細胞間に存在する力の「方向・大きさ」を見出し、これが大脳発生、すなわち脳壁での細胞の「積み重なり」において果たす役割を明らかにすることを目標とする。研究代表者らは2018年に、脳室面近傍域の物性が前駆細胞の核運動に極めて重要な役割を果たすことを報告した。更なる発展として令和1年度は、<1>脳壁内部の力学的状況マッピング、および<2>脳壁の物性を担う新たな分子機構の探索を実施した。<1>切り出したマウス胎仔脳壁に、蛍光標識したフロロカーボンオイルの「油滴」をマイクロインジェクションし、それがどのような形状になるかを計測した。インジェクション自体には成功しているが、脳組織になるべく無傷で導入しないと安定した計測が行えないことが明らかになりつつある。現在、インジェクション法の工夫に尽力している。<2>脳室面は上皮構造アピカル面として「常に収縮しようとする」力を有することはすでに報告されている。研究代表者らは、脳室面を覆うように存在する弾性繊維と呼ばれる蛋白複合体が、脳室面の収縮性を担うことを見出した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/research/pdf/PLOS_B_20180423.pdf