研究課題
血管形成は胚発生において基盤を担うと考えられ、性的二型を示すマウス生殖腺においては、雄特有、あるいは雌特有の血管構造が構築されることがその形態形成に必要不可欠である。現在までの知見としては、特に雄性において、複雑な形態をとる精細管の形成に必須であることが知られている。一方で生殖腺に隣接し、同じくアンドロゲン依存的雄性化を示す中腎領域における血管構造の性差の有無、そしてその機能については、現在に至るまでほとんど報告されていない。本研究ではホルモン依存的性分化過程における血管形成の性差獲得プロセスの解剖学的基盤を明らかにし、その上で、分子細胞学的メカニズム、さらにその意義の解明を目指す。2020年度は、薬剤誘導型血管内皮細胞特異的遺伝子組換えマウス(Cdh5Cre-ERT2マウスとROSA26-tdTomatoマウス)を用いて細胞系譜解析を進めた。2019年度に確認された性差構築により新たに形成される血管の起源の違いについて、形態の性差を構築する血管形成に部位特異的な傾向があることを示すことができた。また、初年度において血管系発生をライブイメージングするために行った器官培養において、心臓からの血流が断たれたことによる血管の退縮が問題となり、イメージングに最適な培養方法を確立するに至らなかったが、この検討を再び行なった。培養条件の工夫により、退縮に関してはわずかに改善されたが、血管構造の伸長が生理的状況に近いかどうかの判断が困難であったため、取得データの改善には至らなかった。実験計画の変更等の問題解決を行いながら遂行した本研究において得られた結果は、生殖器の二次的な雄化に必要なアンドロゲンの性分化初期における伝達(循環)経路に関して新たな解釈を与えうるものであり、解剖学、発生学分野に貢献しうるものであると考えている。
すべて 2021
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International Journal of Molecular Sciences
巻: 22 ページ: 1211~1211
10.3390/ijms22031211
Scientific Reports
巻: - ページ: -
10.1038/s41598-021-89836-7