研究課題
頭蓋底骨格の正中部分は,頭部発生の比較的初期段階から軟骨性骨格として形成される。本研究課題では,ニワトリ胚とマウス胚を用いて,軟骨性骨格が形成される口窩天井部での軟骨原基形成の詳細や構成する細胞の発生系譜,関与する分子群を調べている。期間全体で,下記の知見を得た。1.ニワトリ胚の口窩天井領域に分布した頭部神経堤細胞の発生系譜解析のために,リポフェクション法とTol2-トランスポゾンシステムを組み合わせて,GFP遺伝子を細胞ゲノムに導入し,発現維持させることを狙った。2.5日胚で局所注入した結果,5.5日胚でもGFPを発現する細胞を確認できた。多くの試料ではGFP陽性細胞は頭蓋底軟骨原基の一部に分布していた。口窩天井部への注入を容易にするために,全胚培養系の改良も行った。4.5日胚を超えて培養が可能になったことから,上記標識法と合わせて系譜解析を行う手法が確立できた。2. 口窩天井部での頭蓋底軟骨形成過程で発現するFoxf1に注目し,ニワトリおよびマウス胚で発現部位を調べた。その結果,両者で頭蓋底軟骨原基の形成初期に原基形成部位で発現していた。Foxf1の発現は,口窩天井部で発現して軟骨形成に関与するShhと対応していた。軟骨分化が進行すると,ニワトリでは発現が低下し,マウスでは鼻中隔軟骨からやや離れた部位に限定されたことから,軟骨形成の初期に関与すると考えられた。3. マウス胚口窩天井でのFoxf1の発現を調べる過程で,E10.5~E12.5胚では口窩天井部の形態が大きく変化することを見出し,詳細に観察した。その結果,マウス口腔天井部はE10.5からE11.5胚にかけて,細胞数が増えて厚みを増し,これが鼻中隔形成の場となる正中部の膨らみとなった。脳胞腹側に接する一群の細胞で増殖が顕著だったことから,正中部軟骨形成を担う細胞増殖は脳胞腹側の制御を受けていると考えられた。
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