米国においては、心臓奇形をともなう口蓋裂患者での候補遺伝子としてMEIS2遺伝子の関与が示唆されている。これらの先天異常の原因となる遺伝子群やその発症の分子機構等についての詳細は明らかではない。よって、Meis遺伝子ファミリーに注目し、その組織分化における機能を解析するためにCre-LoxPシステムを用いて頭部の間葉や心臓の中隔形成に関与する神経堤細胞に特異的なマウスとして、Wnt1-cre:floxed-Meis2コンディショナルノックアウト(cKO)マウスを作成し、出生率と死亡率を検討した。得られた122匹の新生仔マウスの出生率はメンデルの法則に従い、妊娠中に死亡する”胎性致死”は表現型として観察されなかった。Meis2cKOマウスの生後1日以内の死亡率は18例中18例で100%であり、早期新生仔死亡の表現型を示した。これらのcKOマウス新生仔で口蓋裂の表現型を観察したところ、完全口蓋裂が観察された(18例中18例)。また頭蓋骨では、野生型マウスで観察される壁間骨と後頭骨が、Wnt1-cre/Meis2cKOマウスでは癒合または消失し、壁間骨様の構造物のみが観察された(18例中18例)。一方,心臓についても観察したところ、大動脈肺動脈中隔の消失が観察された(18例中15例)。大動脈肺動脈中隔は心臓神経堤細胞が平滑筋や結合組織に分化することで形成されることが既に知られており、Meis2遺伝子が口蓋裂および心臓の心房または心室の中隔の形成異常にも関与することが示唆される。このように、Meis2遺伝子は神経堤細胞を介して新規の心臓奇形と口蓋裂を引き起こす可能性が強く示唆された。 さらに、口蓋裂では歯の先天性欠損が観察されるため、歯の形成に関係する遺伝子群のin sillico解析を行ない、いくつかの新規遺伝子を同定し、その遺伝子発現パターンの解析や機能解析などを行なった。
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