NMDA受容体サブユニットNR3Aは、生後1週頃にマウスの脳で一過性に発現が増加する。NR3Aが“古典的”NMDA受容体に加わると、応答やCa2+透過性が減弱し、発達期のシナプス除去につながるとされている。しかし、これはin vivoでの生理機能の基盤となる解剖学的裏付けを欠いた仮説であり、実際にはシナプス局在や発現細胞については殆ど不明である。申請者は自らの研究成果と予備実験を踏まえ、発達期・成体期のマウス脳におけるNR3A受容体の局在と機能的意義を明らかにすることを目標とし、本研究計画を立案した。初年度であるH29年度は、マウス脳における選択的局在部位を解剖学的に同定した。2年目となるH30年度は、NR3Aと共局在し、生化学的複合体を形成する分子の探索とその生理機能の解析を行った。その結果、NR3AチャネルのアセンブリにはNR1サブユニットが必須であることがわかった。またNR1コンディショナルノックアウトマウスにおいてはNR3A受容体の特徴的な集積が認められなかった。さらに、NR1/NR3Aをアフリカツメガエル卵母細胞に発現させ、グルタミン酸やグリシンなど機能修飾物質の作用を検討したが、いずれの組み合わせの投与でもイオンチャネルとしての活性は全く認められなかった。来年度以降は新規のアゴニスト発掘を視野に入れて検討を進める予定である。
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