研究課題/領域番号 |
17K08506
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
浅野 義哉 弘前大学, 医学研究科, 講師 (50359494)
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研究分担者 |
下田 浩 弘前大学, 医学研究科, 教授 (20274748)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脂肪組織由来間葉系幹細胞 / 三次元培養 / 人工脈管組織 |
研究実績の概要 |
令和元年度までの結果により、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(hASC)を主体とする人工脈管ネットワーク組織のマウスリンパ節郭清モデルへの皮下移植およびリンパ節郭清部の深部移植により、リンパ流路再生が誘導される結果を得た。しかし、これは元のリンパ流路の復元ではなく、広範な側副路の形成が主体であった。これらの側副路が既存のリンパ管あるいは血管か、また、新生した脈管かを明らかにするため、FITCデキストランの投与によるリンパ流路ラベリングと組織学的解析を行った。この結果、形成された側副路は既存の血管に伴行するリンパ管で、かつ、皮膚浅層に分布することが分かった。これらより、人工脈管ネットワーク組織は移植により皮膚深層のリンパ管と浅層の既存のリンパ管網を接続し、側副路形成を促進したと推測された。ヒトにおいても皮下組織のリンパ管網は浅層から深筋膜近くまで三次元的に分布するが、上記の結果より、人工脈管組織の移植によるリンパ浮腫治療は、横方向の接続のみならず、深層-浅層の接続による浅層側副路への灌流も有効であると考えられた。 また、マウス由来細胞を用いた脈管組織の同種移植についても検討を重ねた。自身で採取したマウスASCについては継代による拡大培養が難しく、市販のマウスASCを購入して実験を行ったが、やはり同様の傾向があった。これはマウス由来細胞の継代数の限界がヒトより少ないことに起因すると考えられた。組織構築に必要な細胞数は得られたため、現在さらにマウス大動脈、胸管由来内皮細胞の採取を行っており、今後これを用いた脈管組織構築とマウスへの移植を行い、同種移植の検証を加える予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の通り、ASCを基盤とする人工リンパ管網組織のマウスへの移植によるリンパ流路再生について、流路形成が皮下組織浅層の既存リンパ管網への吻合と側副路形成によることを明らかにした。これまでの動物実験の結果から、人工リンパ管網組織移植によるリンパ流路形成のイメージを掴むことができた。同種移植についてはマウス由来初代培養細胞については継代数が限られ、本研究遂行では課題となった。この同種移植に加え、X線照射によるリンパ浮腫モデルでの検証を加え本研究を纏めたいが、新型コロナウイルスの世界的な拡大の影響下で複数の実験材料の調達が遅延したことなどから、特例措置により令和3年度まで研究期間を延長した。
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今後の研究の推進方策 |
マウス由来内皮細胞の採取と初代培養を行い、既に保持しているマウスASCと組み合わせた人工脈管組織を構築し同種同系移植を行うことで、生着と脈管機能、リンパ流路再生の検証を加える。また、平成30年度から使用不可となったX線照射装置が使用可能となるため、リンパ節郭清に下肢X線照射を加えたリンパ浮腫モデルによる治療効果も検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでヒトASCを基盤とする人工リンパ管網組織のマウスへの移植によるリンパ流路再生について、流路形成が皮下組織浅層の既存リンパ管網への吻合と側副路形成によることを明らかにした。これを検証するため、マウス由来細胞を用いた実験を加えようとしたところ、新型コロナウイルスの世界的な拡大の影響下で複数の実験材料の調達が遅延した。このため行っていない実験があることから次年度使用額が生じた。新型コロナウイルス拡大に関する特例措置により令和3年度まで研究期間を延長し、研究費を上記実験に用いる予定になっている。
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