令和3年度は脂肪組織由来間葉系幹細胞(hASC)とヒト皮膚由来リンパ管内皮細胞(HDLEC)を組み合わせた人工組織でみられるリンパ管網形成促進について脈管形成関連因子の分布をさらに検討した。この結果、hASCを基盤とした組織では細胞分裂マーカーの高発現、tip cellにおけるVEGFR2の局在などを認め、これらはhASCの三次元培養化でみられるVEGF-A発現亢進に関連すると推察された。また、マウス由来細胞を用いた同種移植については現在検討を進めており、今後は内皮前駆細胞もソースに加えた自己由来細胞での脈管組織移植を目指す。 研究の全期間を通して得られた成果は、1) hASCの積層培養化においてはVEGF-AおよびHGFをはじめとする複数の脈管形成関連因子の発現亢進を認め、これらによる血管網およびリンパ管網形成の促進が示唆された。2) hASCとHUVECを組み合わせた三次元血管網組織ではhASCのペリサイト様分化を認め、in vitroでの毛細血管様構造が形成された。そのマウス皮下移植ではヒト由来平滑筋層と内皮を備えた静脈様構造が形成された。これらからhASCを主体とした血管網組織は移植後機能的な血管床を形成すると考えられた(論文公表)。3) 一方、hASCとHDLECを組み合わせたリンパ管網組織では多くのtip cellを伴うactiveな脈管形態を認めたが、その皮下移植ではリンパ管網の生着は限定的であった。4) しかし、マウスリンパ流路再生モデルへの移植では、主要な流路あるいは皮膚表層の側副路への排導の促進を確認した。この結果から、hASCとHDLECによるリンパ管網組織の移植はリンパ管吻合に寄与し、リンパ浮腫治療に貢献しうることが示唆された(論文編纂中)。5) 上記に加え、細胞コート法と細胞凍結を組合せた最も迅速な人工脈管組織構築法を開発した(論文公表)。
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