研究課題/領域番号 |
17K08512
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
山岸 覚 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (40372362)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | EdU / DCX / ガイダンス分子 / 新生神経細胞 |
研究実績の概要 |
脳虚血後数日間の亜急性期には神経新生が盛んに行われ、神経機能の再生が試みられている。しかしながら新生神経細胞はやがて死滅してしまう。したがって、新生神経細胞を長期に渡り生存し、大脳皮質で神経細胞へと分化させることができれば、神経機能亢進につながると考えられる。我々は最近、神経新生領域で発現する新規神経軸索ガイダンス分子、Netrin-5を見出した(Yamagishi et al., Front Cell Neurosci, 2015)。Netrin-5は論文報告がほとんどなく機能未知だが、申請者は梗塞層新生血管、梗塞周囲層ミクログリア、側脳室→梗塞層へ移動中の新生神経細胞で強く発現上昇していることを見出した。したがって、①Netrin-5投与もしくは過剰発現による脳虚血時における再生治療の開発を試み、②Netrin-5ノックアウトマウスを作成しフェノタイプを解析した。 ①Netrin-5脳室投与の為のリコンビナント精製について:昨年度からNetrin-5リコンビナント作成には苦労しており、様々な工夫を試みた。N末端シグナル配列の変更やコザック配列の変更を試みたが、収量は増加しなかった。また、カイコでの作成を試みたが、全て不溶画分へ蓄積してしまい、抽出できなかった。 ②Netrin-5 ノックアウトマウスの解析:Netrin-5が神経新生に関与しているか、ノックアウトマウスを用いて解析を行った。その結果、以下の2つのフェノタイプを見出すことができた。1つ目:嗅球におけるDCX陽性神経突起の短縮。2つ目:EdU陽性細胞の異所性移動。特に後者はヘテロマウスでも観察され、Netrin-5が新生神経細胞に対し、ガイダンス因子として機能していることを強く示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①Netrin-5脳室投与の為のリコンビナントについて Netrin-5 cDNA(マウス)をCMVプロモーター下で発現するpIgplusベクターへとクローニングし、様々な変更を行った。上述の通り、機能的Netrin-5を取得することにはまだ成功していないが、ノックアウトマウスの解析が順調に進んでいるため、こちらに重点を置くようにした。 ②Netrin-5 ノックアウトマウスの解析 Netrin-5の全身性ノックアウトマウスはメンデルの法則に従って誕生し、発生上フェノタイプは特になく、日常的な観察でも行動異常は見られなかった。3ヶ月齢のマウスにおいて、嗅球におけるDCX陽性の幼若神経突起長について計測した。カテゴリーを50umずつ5段階に分けてカウントしたところ、ノックアウトマウスにおいては明らかに短い突起の割合が増えていた。また、EdUをインジェクションし、細胞移動について解析したところ、野生型とは分布が異なり、異所性のEdU陽性細胞が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
①Netrin-5脳室投与の為のリコンビナントについて 引き続き、リコンビナントが得られるよう改変を行う。リコンビナントを得ることができれば、中大脳動脈結紮モデルを作成し、脳室内投与を試みる。そして、脳を固定し切片を作成して神経再生における機能を検討する。 ②Netrin-5 ノックアウトマウスの解析 上述した通り、嗅球におけるDCX陽性神経突起の短縮・EdU陽性細胞の異所性移動が見られたため、今後はこれらのフェノタイプについて、詳細に解析を行う。特にEdU陽性細胞がどのような細胞種であるか、各種マーカーを用いて同定する。また、脳梗塞モデルを作成し、EdU取り込み細胞の移動に関しても解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
Netrin-5リコンビナントの精製の収量が少なく、in vivoでのインジェクションが出来ていない。したがって、インジェクションを伴う実験に掛かる費用については次年度へと繰り越すこととした。
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