研究実績の概要 |
脳虚血後数日間の亜急性期には神経新生が盛んに行われ、神経機能の再生が試みられている。しかしながら新生神経細胞はやがて死滅してしまう。したがって、新生神経細胞を長期に渡り生存し、大脳皮質で神経細胞へと分化させることができれば、神経機能亢進につながると考えられる。我々は最近、神経新生領域で発 現する新規神経軸索ガイダンス分子、Netrin-5を見出した(Yamagishi et al., Front Cell Neurosci, 2015)。Netrin-5は論文報告がほとんどなく機能未知だが、申請者は梗塞層新生血管、梗塞周囲層ミクログリア、側脳室から梗塞層へ移動中の新生神経細胞で強く発現上昇していることを見出した。リコンビナント蛋白質の取得は困難を極めたため断念し、Netrin-5ノックアウトマウスのフェノタイプの解析に注力した。その結果、Netrin-5 KOにおける脳室下帯おいて、神経新生がコントロールに比して有意に減少していることを見出した。また、一方で、オリゴデンドロサイトの数が上昇していることを見出した。この結果は、側脳室において発現しているNetrin-5が神経新生を促進し、大脳皮質等の血管内皮細胞に発現しているNetrin-5はオリゴデンドロサイトの産生を抑制していることを意味している。一方、興味深いことに、吻側移動流(rostral migratory stream, RMS)におけるニューロブラストの移動が乱れるフェノタイプを見出した。本研究結果はFrontiers in Neuroscienceから論文発表された。
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