研究課題/領域番号 |
17K08513
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
青戸 一司 浜松医科大学, 医学部, 助教 (60360476)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ソニックヘッジホッグ(Shh)シグナル伝達経路 / patched1 / 脳神経管の細胞死抑制 / CRISPR-Cas9法 / GONAD法 / XIAP / エレクトロポレーション / 変異マウス |
研究実績の概要 |
本研究では、マウス個体発生におけるPacthed1(Ptch1)のC末端と、結合タンパク質X-linked inhibitor of apoptosis protein (XIAP)などによる細胞死抑制機構の生理的役割の解明を目的とする。具体的には、1)CRISPR-Cas9法によってPtch1-CのXIAP結合部位の変異マウスを作製し、個体発生におけるPtch1-XIAPによる細胞死抑制の生理的役割とその分子メカニズムを解明する、2)Ptch1とXIAPへのタグノックインマウスを作製し、Ptch1とXIAPの線毛での局在変化を明らかにすることを目的としている。 平成29年度は、迅速に変異マウスを作製する法として、妊娠が確定した雌マウスの卵管膨大部にCRISPR-Cas9の溶液を注入し、エレクトロポレーションによって受精卵のゲノムに変異を与える方法(GONAD法)を確立した。この方法によりPtch1のC末端のXIAPの結合部位欠損マウス(Ptch1-dIBS)、Ptch1のC末端への2xHAタグ挿入マウス(Ptch1-2xHA)の作製に成功した。それぞれのマウスの表現系を解析することによって、Ptch1/XIAP複合体による細胞死調節機構のマウス胚発生過程における生理的役割を明らかにする。また、Shhリガンド存在下で細胞死を抑制する、Ptch1とXIAPの結合・分離に働く分子メカニズムを明らかにできる。さらに、Ptch1、XIAPと、本研究で新たに同定する分子の線毛での局在変化も観察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変異マウス作製法として、妊娠が確定した雌マウスの卵管膨大部にCRISPR-Cas9の溶液を注入し、エレクトロポレーションによって受精卵のゲノムに変異を与える方法(GONAD法)を確立した。これまでこの方法で20系統以上の変異マウス作製ができている。本研究ではPtch1のC末端のXIAPの結合部位欠損マウス(Ptch1-dIBS)、Ptch1のC末端への2xHAタグ挿入マウス(Ptch1-2xHA)の作製に成功した。これらのマウスを用いた表現系を解析中である。 また、Ptch1-Cのプロテオミックス解析から細胞死調節に関わる分子も単離同定できた。
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今後の研究の推進方策 |
それぞれのマウスの表現系を解析することによって、Ptch1/XIAP複合体による細胞死調節機構のマウス胚発生過程における生理的役割を明らかにできる。また、Shhリガンド存在下で細胞死を抑制する、Ptch1とXIAPの結合・分離に働く分子メカニズムを明らかにできる。さらに、Ptch1、XIAPと、本研究で新たに同定する分子の線毛での局在変化も観察する。 作製したマウスの表現型解析として、一般的な細胞死を検出できるCleaved caspase3の抗体染色及びTUNEL法と、ミトコンドリア経路の細胞死を特定できるCleaved caspase9、Cytochrome Cの抗体染色と、ウェスタンブロットで発現の比較を行う。さらにPtch1-CのCaspase切断部位の変異体マウス(Asp1312Asn)を作製してマウス個体での細胞死の役割も探ることを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度より本年度の使用予定額が上まわったのは、研究の予定に変更があったためである。昨年度は新規変異マウス作製方法を用いいたため、作製にかかる費用が抑えられたためである。本年度は、作製できたマウスの表現型解析のために、遺伝子判定試薬、抗体関連試薬、細胞培養関連試薬、イメージング試薬などを購入するために使用予定額が多くなった。
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