研究課題
本研究では、マウス個体発生におけるPatched1(Ptch1)のC末端と、結合タンパク質X-linked inhibitor of apoptosis protein (XIAP)などによる細胞死抑制機構の生理的役割の解明を目的とする。具体的には、1)CRISPR-Cas9法によってPtch1-CのXIAP結合部位の変異マウスを作製し、個体発生におけるPtch1-XIAPによる細胞死抑制の生理的役割とその分子メカニズムを解明する、2)Ptch1とXIAPへのタグノックインマウスを作製し、Ptch1とXIAPの線毛での局在変化を明らかにすることを目的としている。平成30年度は、迅速に変異マウスを作製する法として、妊娠が確定した雌マウスの卵管膨大部にCRISPR-Cas9の溶液を注入し、エレクトロポレーションによって受精卵のゲノムに変異を与える方法(GONAD法)により作製したPtch1のC末端のXIAPの結合部位欠損マウス(Ptch1-dIBS)、Ptch1のC末端への2xHAタグ挿入マウス(Ptch1-2xHA)の交配による個体数の増加と、ホモ変異体の経過観察を行った。しかしながら、Ptch1-dIBSのホモ変異体マウスでは月齢が半年以上経過しても、Ptch1のヘテロノックアウトマウスの30%に見られる皮膚、脳グリア、筋肉などにみられる癌化は観察されなかった。一方で、Ptch1-2xHAホモ変異体では出生後に致死になる仔マウスが観察されたので、今後詳細に解析を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
変異マウス作製法として、妊娠が確定した雌マウスの卵管膨大部にCRISPR-Cas9の溶液を注入し、エレクトロポレーションによって受精卵のゲノムに変異を与える方法(GONAD法)を確立した。これまでこの方法で20系統以上の変異マウス作製ができている。本研究ではPtch1のC末端のXIAPの結合部位欠損マウス(Ptch1-dIBS)、Ptch1のC末端への2xHAタグ挿入マウス(Ptch1-2xHA)の作製に成功した。これらのマウスを用いた表現系を解析中である。また、Ptch1-Cのプロテオミックス解析から細胞死調節に関わる分子も単離同定できた。
変異マウス作製法として、妊娠が確定した雌マウスの卵管膨大部にCRISPR-Cas9の溶液を注入し、エレクトロポレーションによって受精卵のゲノムに変異を与える方法(GONAD法)を確立した。これまでこの方法で35系統以上の変異マウス作製ができている。本研究ではPtch1のC末端のXIAPの結合部位欠損マウス(Ptch1-dIBS)、Ptch1のC末端への2xHAタグ挿入マウス(Ptch1-2xHA)の作製に成功したが、Ptch1-dIBSのホモ変異体マウスは半年以上月齢が経つが表現型は現れていない。さらに飼育することによって表現型が現れるかどうかを観察していく。HA抗体を用いてPtch1-2xHAの胚の神経管、あるいは脳組織での免疫染色を行い、Ptch1の発現の詳細を観察する。特に、繊毛での局在を確認する。また、HA抗体による免疫沈降、プロテオーム解析により個体中からの新規分子の単離・同定を試みる。
当初の計画よりも順調に研究が進み使用額が予定より減少した。今後、解析により予定通り使用が見込めると思われる。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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