細胞内で不要になった分子やオルガネラは、二重膜で囲まれてオートファゴソームとなる。オートファゴソームにはリソソームが融合し、リソソーム酵素によって内容物が分解される。この一連の機構はオートファジーと呼ばれ、酵母からヒトに至る高等生物にまで高度に保存された現象である。オートファゴソーム膜に局在する分子として酵母のatg8が同定されている。哺乳類にはatg8が複数存在し、分子ファミリーを形成している。申請者らはその中でLC3について着目し、LC3がオートファジーだけでなく、脂質代謝に関与することを世界で初めて明らかにした。本研究では、LC3が関与する脂質代謝の分子機構を明らかにすることを目的とした。 今年度はオートファジー亢進モデルとして知られるカテプシンDノックアウトマウスとLC3ノックアウトマウスを交配させ、両分子のないマウスを作成した。両遺伝子を欠損したマウスは、カテプシンD単独欠損マウスと同様に生後25日前後で死亡し、神経細胞内には著名なオートファゴソームが観察された。また、様々な組織の形態を調べたが、既報のカテプシンD単独欠損マウスの組織形態と同様であった。以上のことから、LC3がオートファジーには必須ではないことや、他のatg8ファミリーが代償している可能性が示唆された。 さらに脂質代謝の違いを調べるために、カテプシンD単独欠損マウスと、LC3遺伝子欠損マウス、さらに両遺伝子欠損マウスのそれぞれから胎児線維芽細胞の細胞株樹立に成功した。
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