研究課題/領域番号 |
17K08517
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
藤原 研 自治医科大学, 医学部, 准教授 (00382945)
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研究分担者 |
屋代 隆 自治医科大学, 医学部, 教授 (80119859) [辞退]
東 森生 自治医科大学, 医学部, 助教 (90709643)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 下垂体前葉 / 細胞間相互作用 / 下垂体腫瘍 / プロラクチノーマ / 細胞増殖因子 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
平成29年度は、以下の4つの研究実績が得られた。①これまでの申請者の研究から下垂体前葉内で産生され、局所で作用すると想定されたレチノイン酸の作用の解析を行った。レチノイン酸が下垂体原基及び成体下垂体の未分化細胞で発現する転写因子Prop-1の発現を促進することを発見した。このことから、レチノイン酸による分化調節機構は下垂体腫瘍形成に関与する可能性が考えられた。②プロラクチノーマモデルラットにおける濾胞星状細胞の関与につて解析した。非ホルモン産生細胞である濾胞星状細胞は、最近の研究から幹細胞の性質を有することが分かってきた。DES誘発プロラクチノーマモデルラットを用い、正常から過形成、下垂体腫瘍での濾胞星状細胞を解析したところ、一部の細胞は下垂体腫瘍での血管細胞に分化する可能性が分かった。③プロラクチノーマモデルラットにおける血管形成の細胞レベルでの解析を行った。光学顕微鏡および電子顕微鏡での解析から、プロラクチノーマでは血管内皮細胞のみならず周皮細胞が著しく変化することが分かった。④プロラクチノーマモデルラットを用い、プロラクチノーマ形成過程で発現変動する遺伝子の解析を行った。正常下垂体前葉とDES処理後の下垂体前葉をDNAマイクロアレイ解析を用いて発現遺伝子を比較したところ、著しく増加もしくは減少する遺伝子が明らかとなった。その中から、幾つかの生理活性物質遺伝子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、「下垂体前葉内で産生される生理活性物質を介した細胞間相互作用による細胞機能調節機構の破綻が腫瘍化の一因となる」という仮説を検証するため、3年間で次の3項目について研究を計画している。①腫瘍形成の過程における下垂体前葉内の生理活性物質および受容体の発現量の定量解析、②生理活性物質および受容体の形態学的同定、③同定した生理活性物質の作用(細胞増殖、細胞死、細胞分化、ホルモン合成・放出)の解析、を行う。 平成29年度は、下垂体前葉内で産生される生理活性物質で、プロラクチノーマの形成に関与する可能性がある物質を同定するために、DES処理後の下垂体前葉で発現が変動する遺伝子をDNAマイクロアレイ解析を用いて網羅的に解析した。実験の効率化、データの信頼性を考慮し、DNAマイクロアレイは専門会社に受託した。その結果、プロラクチノーマ形成に伴い発現が著しく増加もしくは減少する遺伝子を効率よく同定でき、その中から一部の因子については、発現細胞の同定、機能の解析に進むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究を引き続き発展させ、DNAマイクロアレイ解析で同定した遺伝子の腫瘍形成の過程における下垂体前葉内の発現を解析する。さらに、同定された生理活性物質および受容体の形態学的解析、同定した生理活性物質の作用(細胞増殖、細胞死、細胞分化、ホルモン合成・放出)の解析に進む予定である。
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