研究課題/領域番号 |
17K08518
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
松野 健二郎 獨協医科大学, 医学部, 特任教授 (20094047)
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研究分担者 |
上田 祐司 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (10364556)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ラット肝移植 / 拒絶反応モデル / 免疫寛容モデル / 3重免疫酵素染色 / 4重免疫蛍光染色 / 免疫組織学 / 樹状細胞亜群 / ドナー特異的抗体 |
研究実績の概要 |
(1)新規4重染色法を確立し、拒絶反応優位モデルの移植肝内の残存ドナーDC亜群が増殖するリンパ球とクラスターを形成することを証明した。これは、ドナーDC亜群が直接感作をおこしレシピエントCD8+ T細胞の拒絶反応を移植肝内で誘導していることを示す。一方、免疫寛容優位モデル(DST)では、移植肝内のドナーDC亜群は5%以下に減少するので、移植肝内の拒絶反応が抑制され、免疫寛容の一因となることが強く示唆された。 (2)このデータと本課題2018年度までのデータを元に論文を作成し、昨年12月にインパクトファクター付の国際誌に投稿した。本論文は肝移植免疫寛容優位のモデルであるDSTを行うと、(1) 抗ドナーMHCⅠ抗体が産生され、それがドナーDCを除去して拒絶反応を有意に抑制すること、(2) ドナー特異的な制御性T細胞を誘導すること、そして(3) 抗ドナーMHCⅡ抗体を前投与すると、肝障害作用もなく拒絶反応を有意に抑制することを証明し、DSTによる免疫寛容のメカニズムを明らかにしたものである。さらに、抗ドナーMHCⅡ抗体が肝移植の免疫抑制剤として臨床応用の可能性があるという提案ができた。 (3)しかし、rejectされため、次の候補誌に投稿するための追加実験を行っている。そのため論文発表が遅れており、本年度内に終了が困難となった。そこで補助事業期間の延長を申請し認可されたので、現在研究を継続中である。 (4)DST処置で全身性に抗体応答が起こることは新型ワクチンの開発にもつながり、本研究の重要な副産物となった。DSTではドナーT細胞が最も有効であること、ドナーT細胞に病原体抗原を標識投与することにより、脾臓のみならず全身のリンパ節で多所性に中和抗体を誘導することを明らかにした(発表論文)。さらに、日本免疫学会でも発表し、ベストプレゼンテーション賞を受賞した(学会発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)新規4重染色法は、本課題の「多重免疫染色による免疫組織学的解析」の中心的な技術であり、今回確立したことにより、DSTによる免疫寛容のメカニズムに関して、移植肝レベルの解析ができた。 (2)昨年12月に投稿した論文は、本課題の目的を満たすデータを含むもので、もしこれが発表できたら、DSTによる免疫寛容のメカニズムを解明できたことになる。 (3)本課題の副産物として、抗ドナーMHCⅡ抗体が肝障害作用もなく肝移植の免疫抑制剤として臨床応用可能であること、DST処置で全身性に抗体応答が起こることが新型ワクチンに応用できることなどを提案できた。 以上から、今年度の実績は交付申請書の実施計画を満たしており、進捗状況は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)昨年12月の投稿論文がrejectされため、次の候補誌に投稿するために追加実験を行っている。そのため論文発表が遅れており、補助事業期間の延長を申請し認可された。追加実験としては、査読で定量性に難点を指摘されたので、パーキンエルマージャパンの最新の画像解析ソフトを導入して、移植肝内に浸潤したレシピエントのCD8+ T細胞の増殖率の定量化を行うことを試行中である。この実験がうまくいけば、客観性・定量性を大きく改善できることになる。 (2)(1)を含めた論文を次年度中にまとめ、別の国際誌に投稿する。本論文がacceptされれば、本課題の目的を到達したことになる。 (3)本課題の派生研究として、DC亜群の分析をもとに、ラットのDC亜群について英文総説の執筆を始める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題について実験を終了し昨年末に国際誌に投稿したが、rejectされため、次の候補誌に投稿するために追加実験を行っている。そのため本年度内に終了が困難となったので、補助事業期間を延長し次年度使用額が生じた。本使用額は追加実験消耗品と論文校正・掲載料に充てる予定である。
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