研究課題
ラット異系肝移植において拒絶反応優位モデルと免疫寛容優位モデル(ドナー末梢血輸血、DST)を作製し、BrdUやEdUを含む多重免疫染色による細胞亜群と増殖能の免疫組織学的解析をおこない、ドナーやレシピエントのリンパ球や樹状細胞(DC)の動態を明らかにし、免疫寛容のメカニズムを考察することが目的である。前年度に4報目の論文を作成し国際誌に投稿したが、査読で定量性に難点を指摘されrejectされたため、補助事業期間の延長を申請・認可された。本年度は、パーキンエルマージャパンの最新の画像解析ソフト(Vectra Polaris Imaging System, Akoya Biosciences)を導入して、移植肝内に浸潤したレシピエントのCD8+ T細胞の増殖率の定量化を行った。肝移植後5日目の肝臓の染色切片全体をスキャンし、類洞領域の面積とCD8+ T細胞、BrdU+CD8+ T細胞をそれぞれデジタル定量化した(各群 n=3)。その結果、抗ドナーMHCⅠ抗体と抗ドナーMHCⅠ抗体の前投与群で、肝移植後5日目の類洞領域におけるCD8+ T細胞とBrdU+CD8+ T細胞の有意の抑制を認めた。これをもとに新たに作成した論文は、2020年12月に別の国際誌にacceptされ、Editor’s choiceに選ばれた(発表論文)。本論文は肝移植免疫寛容優位のモデルであるDSTを行うと、(1) 抗ドナーMHCⅠ抗体が産生され、それがドナーDCを除去して拒絶反応を有意に抑制すること、(2) ドナー特異的な制御性T細胞を誘導すること、そして(3) 抗ドナーMHCⅡ抗体を前投与すると肝障害作用もなく拒絶反応を有意に抑制することを証明し、DSTによる免疫寛容のメカニズムを明らかにしたものである。さらに、抗ドナーMHCⅡ抗体が肝移植の免疫抑制剤として臨床応用の可能性があるという提案ができた。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
International Immunology
巻: 33 ページ: 261-272
10.1093/intiimm/dxaa076