嗅覚一次中枢主嗅球局所回路ニューロンで近年特に注目されているドーパミン(DA)‐GABAニューロンの解析を完了し、論文としてまとめた。嗅球DA-GABAニューロン群の形態学的多様性を明確にし、次の4つのタイプを同定した。第1は大型傍糸球体細胞(large periglomerular cell)で樹状突起を1~数個の糸球体内にタフト様に分岐し、軸索を側方に伸ばし、更に糸球体内へと伸ばしている。逆行性トレーサー実験で抑制性糸球体近傍連合ニューロンと名付けたニューロンに対応する。このニューロン群では複数の軸索を有するものもかなり高い頻度で見られたことも特徴的である。第2は小型傍糸球体細胞(small periglomerular cell)であり、重要なことは軸索を有する細胞と無軸索の小型傍糸球体細胞、両者の存在が確認できたことである。第3は糸球体貫通細胞(transglomerular cell)で側方に長い樹状突起を伸ばし、複数の糸球体を貫いている。第4は被覆細胞(incrusting cell)で主に糸球体表層部に突起を伸ばしており、小型傍糸球体細胞の1サブタイプとも考えられる。 マウスでこれまで明らかにしてきた新しい所見に基づいて、比較解剖学的に他の動物種でも嗅球ニューロン群の構成を検討した。我々が以前検討したジャコウネズミ、モグラ、ハリネズミ、モルモット、ツパイを選んで解析を進めた。特に、他の脳部位での我々の解析でsecretagogin含有ニューロンは種差が大きいことが示唆され、構造的にも特殊なジャコウネズミ嗅球において我々が発見した特殊なシナプス野nidusとの関係を中心とした解析を進めた。また、嗅球DA-GABAニューロン群についても検討し、モルモットではマウスと比較して大型傍糸球体細胞の比率が極めて高いことが明らかとなった。
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